もみじの研究ノート

駅名標の奥深い世界へようこそ。

日高線代行バスの概要

今回、初めて「地域の公共交通」系の話題を取り上げます。今回取り上げるのは日高線。本題に入る前の前書きとして、日高線代行バスはどういう運行をしているのかについて、趣味的な観点からまとめていきます。そのため、本題は次回からとなります。

概要

2015年、厚賀~大狩部間で発生した高波による線路被害の影響で、日高線鵡川~様似間には、列車代行バスが運行されています。乗車券のみで乗車可能で、青春18きっぷ等でも乗車が可能です。代行バスのあまりWikipediaなどには書かれないような概要を、私が知っている範囲で記録として以下に記載します。

 

運行会社

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2018年まで担当していた酒井観光バス

日高線鵡川~静内間 はな交通・ジェイ・アール北海道バス・むかわ観光バス・樽前観光バス(2018年まで:酒井観光バス)

日高線静内~様似間 ジェイ・アール北海道バス(静内発浦河行きの1便のみ別会社)

なお、代行バス運行開始当初はジェイ・アール北海道バスが中心となり、運行していました。現在のように地元バス会社による本格的な運行が始まったのは、2015年6月からです。

 

車両

代行バス運行開始当初は、ジェイ・アール北海道バスの高速・貸切タイプでした。車両も不足していたと思われ、コンサドーレラッピングバスなども運用に就いていました。その後、6月から地元のバス会社による運行が開始。現在は地元バス会社が貸切タイプ、ジェイ・アール北海道バスは全便が路線タイプのワンステップバスを運行しています。以前は鵡川~静内間は全て地元バス会社によって貸切タイプの車両で運行されていましたが、地元バス会社の撤退や「低床バスを運行してほしい」という乗客の要望などにより、2019年4月から鵡川~静内間でもジェイ・アール北海道バスでも運行が始まりました。

ジェイアール北海道バスの車両は、札幌圏を走っていた路線バス7台を貸切登録に変更の上、様似に転属させて運行しています。車内には地下鉄との乗り継ぎ案内など、札幌圏を走っていた当時の面影が残ります。

なお、2015年4月時点で、ジェイ・アール北海道バスの路線タイプの車両で、中ドアを開けている写真が投稿されています(こちら)。今とは乗降車の方法が異なっていたのかもしれません。

 

 

車掌の乗務

運行開始直後、おそらくすべてのバスに、車掌が乗務していました。現在でもYouTubeに動画が投稿されているはずです(こちらなど)。車掌は車内放送、各駅では待合室に乗客がいないか確認するといったことをしていました。いつからワンマン運転になったのかは不明です。

 

2台以上での運行

以前テレビ番組で、高校の前に2台以上のジェイ・アール北海道バスの車両が停車している光景を見たことがあります。また、鵡川駅前に観光バスタイプの車両が2台停車している光景も投稿されています(こちら)。1便2台以上の運転が行われているのかもしれません。

 

運賃収受

駅に新たに「きっぷ受け箱」が設置され、きっぷを持たない乗客は運賃を直接きっぷ受け箱に投入するという仕組みになっていました。ただし、大狩部駅など一部の駅には設置されていた記憶がありません。実際このきっぷ受け箱は代行バスの乗降場所から離れた場所に設置されている駅(鵜苫など)も多く、事前にきっぷを購入できる駅は静内・(浦河)・様似のみであるため、利用するには不便でした。

また、代行バスの営業形態は貸切バスであるため、乗務員は基本的にきっぷの確認をしません。そのため運行当初は自由に乗降できる状態であり、不正乗車も横行していたのではないかと推測されます。

2017年9月1日から、バス車内に「きっぷ・運賃受け箱」が設置されました。両替機能などはないただの箱で、自動両替機付き運賃箱を備えたジェイ・アール北海道バスの車両は、その運賃箱の横に別途設置されました。ただし「ただの箱」であるため、乗務員が投入した運賃の額を確かめるといったことは行われません。なお最近、乗務員によっては、期限切れ定期券を使用している学生を注意するといったことも行われているようです。

 

行先表示

観光バスお決まりの「代行バス様」の表記のほか、観光バスタイプでは、「日高線代行バス 静内行き」といったプレートやただの紙が乗降口付近、または前面に掲示されます。ジェイ・アール北海道バスの車両は、前面LED表示器に「様似行き 列車代行」側面には始発・終着駅のみ記された表示が行われます。最近、バスの前面に「1」「5」などの数字が降られたバスがありますが、何を意味しているのかはよく分かりません。

 

車内放送

運行開始直後は、車掌による丁寧な案内放送が行われていました。しかし、ワンマン運転になってからは車内放送が行われず、2017年時点など、終始無言で運転していたような時期もありました。2018年時点~現在では、「次は○○」「まもなく○○」の肉声放送が行われています。

ジェイ・アール北海道バス担当便では、自動放送装置を活用し、「次は○○」「まもなく○○」をはじめとした内容の自動放送が行われています。放送パーツは様似営業所の放送を基にしたものとなっており、札幌圏では聞けない旧放送が聞けます。なお、2018年の静内~様似間と2020年の鵡川~静内間では一部の放送パーツや言い回しが変わっていました。たまに放送の録り直しを行っているようです。中ドアは開かないため、車外放送は行われません。

 

車内表示器

ジェイ・アール北海道バスでは、運賃表示器を活用した次駅表示が行われています。運賃表示は行われません。特徴としては、札幌圏のLED表示と比べて「 鵜    苫 」などと、2文字の駅の字間が広くなっています。それ以外は同様です。なお、札幌圏では長沼営業所所属の車両で使用されていた「次は」の部分が矢印表示、運賃表示部分が小さい旧型の運賃表示器が、この代行バスの車両に最後まで残っています。2018年現在で現役でしたが、今でも使われているでしょうか。

 

乗降場所

運行開始当初は各駅の駅前へ乗り入れていましたが、少しずつ運行の効率化のため、駅前に乗り入れない駅が増えました。いつどこが変更になったか、後日追記してまとめる予定です。全体として、静内~様似間のほうが駅前に乗り入れない駅が多いです。また、絵笛のように駅から30分以上も離れた場所に乗降場所がおかれる駅があります。

駅から離れた乗降場所には、路線バスのような停留場ポールが設置されます。初期に乗降場所が変更された駅では、停留場ポールにジェイ・アール北海道バス長沼営業所管内の停留所で使用されていた、札幌市営バスのポールが使用されています。駅によってはかつての停留場名が確認できるほか、札幌市民憲章が書かれたままのポールもあり、とても興味深いです。なお、近年変更された駅では、円型のポールが新規製作されています。

各駅の乗降場所は、ホームページでは公開されていません。(これは問題だと考えています)静内駅様似駅などには、各駅乗降場所の一覧があり、閲覧することができます。

 

仮乗降場(?)

駅以外に乗降場所がいくつか設けられています。代表的なものが2017年に新設された「大狩部(高台)」です。ジェイ・アールバスの車内表示器には「大狩部高台」と表記され、自動放送でも「おおかりべたかだい」とアナウンスされます。道南バスの「大狩部」バス停と同じ位置に設けられており、駅とはやや距離があります。(ちなみに大狩部駅に最も近い道南バスの停留所は「大節婦」です)運賃は大狩部駅と同じ扱いとなっており、これは国鉄の仮乗降場とも異なる取扱いです。大狩部(高台)~大狩部を乗車した場合の運賃は、鉄道ファンの間での謎となっています。

また、朝夕の通学時間帯に、沿線の高校(富川高校・静内高校)の前に乗り入れるバスがあります。富川高校には上下1本ずつ、休校日も乗り入れるようです。

 

待合所

基本的には駅の待合室となっていますが、乗降場所が駅前ではない駅では、既存のバス待合所が事実上の待合室変わりとなります。なお、節婦のようにプレハブの待合所が新たに設置された駅もあります。

 

鵡川駅での遠隔放送

列車とバスの乗継駅である鵡川駅では、列車到着時にバスのりば・発車時刻の遠隔放送が数回行われます。鵡川駅舎内・ホームにスピーカーがあります。なお、同様の放送は浜田浦駅汐見駅などでも流れます。列車で浜田浦駅などへ駅訪問に行くと、おかしな放送が流れるので、ぜひ聞いてみてください()

 

列車運行区間での案内

苫小牧駅では現在、鵡川行きの列車のみが運行されていますが、代行バスが接続する便では、駅の案内は終着駅を案内します。そのため、現在も苫小牧駅で「静内行き」「様似行き」の表示と案内がなされます。

日高線を走る普通列車には、時期は不明ですが代行バスの案内が追加され、代行バスのりばや運賃についてなどの案内がなされます。

 

静内駅

静内駅代行バス同士の乗継駅であり、乗車券を持っていない乗客はこの駅で購入するよう案内されます。バスによっては駅員が駅前の乗降口付近に立ち、乗客への案内などが行われます。

 

休憩

代行バス車内にはトイレがないため、トイレ休憩が設けられることがあります。休憩駅は日高門別駅、および蓬栄駅であることが多いです。(私の経験上なので間違っているかもしれません)なお、乗務員へ申し出れば、最寄りの駅「等」に一時停車し、トイレに行けるようになっているようです。

 

車両の回送

運用の都合上、静内駅から鵡川駅へ、など、乗客を乗せずに回送運転することもあります。この場合は、代行バスのルートではなく、最短経路を通ります。以前目撃した時は、前面表示には「ジェイ・アール北海道バス」と表示していました。バスの回送も貸切運用の一部であり、それなりの費用が掛かっているものと思われます。

 

乗務員の休憩場所

乗務員は、鵡川町の道の駅などに休憩室が確保されています。また、様似駅前にある旅館を貸切り、宿泊されているようです。この旅館では代行バスの運行に伴い、一般の方の宿泊を4年以上中止されているようです。旅館のブログ(こちら)には、乗務員のリアルな日常が紹介されています。ぜひ読んでみてください。

 

その他

ジェイ・アール北海道バスの車両では、降車ボタンが作動します。「次、停まります。ご乗車ありがとうございます」という放送もあります。なお、バスは各駅で停車するため、基本的に降車ボタンを押さずに下車するようになっているようです。

ジェイ・アール北海道バスの路線では、「ピピピピピ 次の交差点を、右折です。右折です。」といった運転支援装置(?)が、代行バスでも活用されています。特に静内~浦河間では日高東別など、複雑な経路で運転される区間があり、乗務員の負担も軽減されているものと思います。

代行バスの乗務員は、駅ごとの乗降者の人数を必ず把握し、紙に書き込みます。

 

とりあえずこんな感じでしょうか。誤り、追加してほしいこと、情報提供などがありましたら、コメントかツイッターでお知らせください。

日高線がJRであるのはあと数年です。代行バスという特殊な形態ながら、どのような最期を迎えるのかは気になるところです。