もみじの研究ノート

駅名標の奥深い世界へようこそ。

日高線廃止代替バス 試験運行!?

あの日高が!?

ちょっと馬鹿にしているような見出しでごめんなさい。日高線代替バスを試験運行するという話題が出ました。試験運行自体はとても良い取り組みで、真に必要な取り組みがやっと行われるのか、という気持ちと共に、公共交通に無頓着な日高地方がこんな斬新な取り組みを行うのかという驚きもあります。

さて、その代替バス。どこが運行するの?いつからいつまで? そんな疑問が浮かんできます。バス前面の表示は?放送は?新しいバス停ができる? 趣味的にもさまざまな「おもしろいこと」が実施されそうです。

でも現在、「正しいことが何もわからない」という状況です。原因は、「地元自治体の議論を公開していないこと」またそれが原因となり、「メディアが憶測での報道をせざるを得ないこと」の2つだと思います。

 

転換バス試験運行を巡る報道

さて、時系列順に見てみましょう。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071600979

JR北海道、地元自治体に25億円 日高線のバス転換支援 時事ドットコムニュース

2020年7月16日 17:59

  • 時期:「来年3月から」
  • 内容:「『転換バス』の運行開始」
  • 私のコメント:今回の会議はこの記事が一番最初でした。普段は目にしない新聞社です。記事からは「来年3月からバス転換」と読み取れます。つまり正式に廃止されるということです。個人的には、議論が全く進んでいない状態で正式な廃止などできるのか?と感じ、後日の道新などの報道を待つこととしました。

 

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/441454

日高管内7町長臨時会議 転換バス試験運行要望へ 北海道新聞 どうしん電子版

2020年7月17日 09:44

  • 時期:「来年3月のJRバスのダイヤ改正に合わせ」
  • 内容:転換バスの試験運行
  • 要望先:JR北海道
  • 目的:(出席者によると)「バスの需要や採算性を見極め、運行継続が可能か確かめる」
  • その他:転換バスのダイヤ案などについても検討
  • 私のコメント:1日遅れて道新の報道が出ました。え!あの日高がこんなことするの!とびっくりしましたね。気になったのは「来年3月のJRバスのダイヤ改正」という表現。一般的に3月にダイヤ改正をするのはJR(鉄道)です。これはJR(鉄道)を言っているのかJR列車代行バスを言っているのか、それともジェイ・アール北海道バスのことを言っているのか、何ともわからない表現です。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/bef898104bee7cbc262fd66b3b0c27a96997d50d

JR日高線鵡川―様似間 代替バスの試験運行要望へ 来春ダイヤ改正に合わせ 管内7町が臨時会議 苫小牧民報

2020年7月17日 16:09

  • 時期:「2021年3月のJRバスのダイヤ改正に合わせ」
  • 内容:「代替バスの試験運行」
  • 要望先:「JR北海道やバス事業者
  • 目的:様似町坂下町長「一度、困っている人のためにバスを走らせてみて1年後に評価し反省点を改善しながら、住民の利便性を向上させたい」
  • その他「沿線自治体が新しいバス路線についてJR側と協議を重ねている沿線自治体が新しいバス路線についてJR側と協議を重ねている」
  • 私のコメント:「JR北海道やバス事業者」という表現が出ました。地域のバス事業者と一体になって公共交通を再編するという意味にとれます。JR単独で代替バスの試験運行をしても、既存路線バスがそのままで一体何が分かるんだ?とは思っていたので、これはいいと思いました。

 

http://www.hokkaido-nl.jp/article/18092

バスダイヤ改正にあわせ 日高報知新聞

2020年7月17日

  • 時期:「2021年3月のバスダイヤ改正に合わせ」
  • 内容:「転換バスと既存路線バスの見直しによる統合
  • 要望先:「ジェイ・アール北海道バス道南バス
  • 目的:「一番困っている利用者のために」(日高町村会長・坂下一幸様似町長)、このダイヤ改正によるバス運行を利便性の高い広域的な公共交通の実現に向けた一歩にしたい」
  • 私のコメント:ここで具体的な表現が出てきました。ジェイ・アール北海道バス道南バスの路線バスと現在の代行バスを統合しようというものです。ただし、「試験的に」とは一言も書いていません。また、「転換バス」という表現であり、「代行バス」ではありません。この報道だと、来年3月から日高線は正式に廃線とし、予定では代替バス(転換バス)と既存の路線バスは別々に運行する予定だったが、この機会に1つに統一しようじゃないか、というような雰囲気を感じます。

 

https://mainichi.jp/articles/20200717/ddl/k01/020/059000c

バス試験運行を要望 日高線沿線7町長会議 鵡川-様似間 /北海道 毎日新聞

2020年7月17日

有料記事なので読めません!!

 

https://www.muromin.jp/news.php?id=8905

日高線バス転換 路線統合「利便性高く」 来年3月ダイヤ改正に合わせ 室蘭民報

2020年7月31日 14:10

だいぶ後になって出てきましたね。有料記事なので読めません!!が、見出しからすると日高報知新聞と似たような雰囲気を感じます。

 

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/448079

日高線バス転換、決着見えず 7町長「1対6」の構図 JR支援金25億円巡り紛糾 北海道新聞

2020年7月31日(Web公開:2020年8月6日 18:38)

  • 時期:「廃線の最終合意に至らなくても、来年3月のJRバスのダイヤ改正に合わせて」
  • 内容:「転換バスの試験運行」
  • 要望先:「JR側」
  • 目的:様似町坂下町長「一度、困っている人のためにバスを走らせてみて1年後に評価し反省点を改善しながら、住民の利便性を向上させたい」
  • その他:池田町長「廃止受け入れの最終判断は、試験運行して住民の意見を聞いてから」町長らの間では「これ以上、結論を先延ばしにはできない」ある町長は「廃線合意がないまま、JRが費用負担し試験運行に応じるわけがない」と強調
  • 私のコメント:これを書いている日に公開されました。浦河町長が前にも増して大反対しているそうで、大変ですね。呆れるばかりです。転換バスの経路やダイヤは7町の実務担当者が決めたんだなとか、今後バス会社とも協議するんだなとか、いろいろ分かります。こういう詳しい記事を書くのは道新だけなので、ありがたいといえばありがたいです。
  • 2021/01/31追記。この時、廃線の受け入れは転換バスの試験運行をしてからの判断ということで、廃止反対派からすれば、この試験運行するバスが便利すぎては困るわけです。廃線が決まった現在は「利便性の高い交通機関を整備することで一致した」〜なんて言っていますが、現時点でも代替バスの詳細が何も決まらない原因は、「日高線廃線を強行するJRは無責任だ」という思いや、「試験運行するバスが便利すぎては(バス転換の流れに進んでしまうから)困る」というような考えが残っていることが一因なのではないかと思ってしまいます。

 

どの報道が正しいの?

さてさて、ここまでいろいろ見てきたわけですが・・・

と、不透明な点がたくさんあるのです。どの報道が正しいのか、なんとなくは分かるものの、正確には分かりません。

 

試験運行は地元の路線バスも巻き込むのか

話を変えて、ちょっとこの「転換バスの試験運行」について考察してみます。記事を読む限りでは、以下の4つのどの可能性もあるように感じます。

  • 代行バスを大規模改正・路線バスはそのまま
  • 代行バスを大規模改正・路線バスはすべて運休
  • 代行バスは現状を維持・路線バスのみを再編
  • 代行バスをすべて運休・路線バスのみを再編

これについて私が気になるのは、地元のバス路線を巻き込んで試験運行するのかということです。「代行バスを大規模改正・路線バスはそのまま」の場合、その期間中は路線バスが2重に運行されることになります。思ったような乗降客データなどはとれず、試験にはならないでしょう。既存の路線バスをすべて運休させたうえで試験運行する、すなわち「代行バスを大規模改正・路線バスはすべて運休」としなければ、試験運行とはならないはずです。

 

代行バス」はあくまで鉄道の代行

一方、代行バスはあくまで鉄道運行の代行を行うものです。その代行バスを、停留場を2倍に増やしたり、鉄道の走っていない地域へ延ばしたりという対応をするのかというのは疑問です。自治体の負担でそれをやるならまだわかるんですが、「別の町長は『廃線合意がないまま、JRが費用負担し試験運行に応じるわけがない』と強調する」と報道にある通り、JRに費用を負担させる気」満々ですからね。果たして列車代行バスが向別に行ったりえりもに行ったりするのか。疑問です。

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このような乗車券が発行されることはあるだろうか、いや、ない。

(yoshi223の鉄道館 マルス券シミュレーターより)

また、乗車券の扱いやバス停の設置がどうなるのかも疑問です。大狩部高台のようなバス停が大幅に増えることになるはずで、乗車券の区間はどうするのか、など様々な問題が生まれます。現在「大狩部~大狩部高台」間の運賃を巡って鉄道ファンの間で謎となっていますが、今後はそのような利用が増えるはずです。その場合、扱いをどうするのでしょうか。旅客営業規則に沿った営業が、果たしてできるのでしょうか。疑問です。

以上のことを踏まえたとき、「代行バス代行バスのまま走らせざるを得ない」という可能性も出てきます。あくまで鉄道の代行輸送ですから、駅のない場所にバス停を置きまくったり、えりも岬まで直通運転なんてことはできないはずなんですよ。規則的に。結果として、「代行バスは現状維持・既存のバス路線のみを再編」というような可能性は十分にあり得ます。ただし結果としてそれはただの路線バス再編プロジェクトであり、転換バスの試験運行にはならない、または意味のない代行バスが走り続ける無駄な状況が生まれてしまうんですね。いや、今も「(地元の高校生と一部の利用者と鉄オタ以外)意味のない代行バスが走り続けている無駄な状況」ではあるんですけど。

さて、JR北海道に向けて正式に「転換バス 試験運行のお願い」をするのはこの後になりそうですね。JR北海道はどう対応するでしょうか。JR北海道が、あらゆる方法で持続可能な交通体系の構築に向けて協力する姿勢であれば、受け入れ、「代行バスは鉄道の代行」という原則を超え、規則の面での制限を乗り越えて協力するでしょう。ただし、ちょっと現実的でないような気がします。本当に画像のような券が発行されるかというと、難しいよなぁと思います。あるいは、もっと別の方法で、効果的な「試験運行」が実施されるでしょうか。今後ちょっと注目していきたいと思います。

 

なんでこんなことになっているのか

さて、試験運行はどんな形になるかなとオタクが妄想するほど、詳細が発表されていない、というか、各社さまざまな報道がされている転換バスの試験運行。原因は、「地元自治体の議論を公開していないこと」またそれが原因となり、「メディアが憶測での報道をせざるを得ないこと」の2つだと思います。これについて、次回見ていきます。つづく。

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