「サッポロビール」撤去へ・・・
ご存じの通り、サッポロビールは現在JR北海道の駅に設置されている「本場の味 サッポロビール」の駅名標広告の掲出を終了するというニュースが報道されました。北海道の駅を象徴する看板であっただけにとても残念です。
配信されたニュースを読む
記事は6月9日の正午、北海道の今を読み解く地域経済ニュースサイト「リアルエコノミー」によって配信されました。北海道の鉄道関連のニュースの第一報がこのメディアから配信されることは珍しく感じます。
広告掲出から今年で37年、サッポロビール(本社・東京都渋谷区)はJR北海道ソリューションズ(同・札幌市東区)と協議、定期的に実施している広告施策の見直しの一環として駅名標広告の掲出を終了することにした。
駅名標を管理しているのはJR北海道ソリューションズです。旧「ジェイ・アール・エージェンシー」で、駅名標の盗難を伝えるニュースでも同社が取材に答えています。
サッポロビールが広告施策の見直しを定期的に実施しており、今回もその一つというわけです。雰囲気的にはサッポロビール側から見直しの提案をしたような雰囲気です。
当時から変わらない駅名標が設置されている駅は、2020年の時点で約410駅。
ほう。410駅ですか。これは「平和」が含まれるのか、「手稲」が含まれるのか「摩周」「知床斜里」が含まれるのか気になるところですが、ところでJR北海道の駅って今いくつでしたっけ?
会社概要|企業・採用|JR北海道- Hokkaido Railway Company
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/company/comtop.html
現業機関 2020年6月1日現在
駅 390(有人駅101 無人駅289)
・・・え? 390駅?そして2020年6月時点? これは日高線を含んでいるということです。え、公式、データ更新してないの・・・?
とりあえず、この部分は後日検証が必要です。ここの数字がちゃんとしているか、していないかが、記事後半の内容にかかわってきます。
このうち函館や新函館北斗、小樽~岩見沢間、旭川、札幌~苫小牧、札幌~北海道医療大学間、帯広、釧路、上富良野の各駅のほか、北海道新幹線の新函館北斗、木古内、奥津軽いまべつの3駅を合わせた約60の駅には、新デザインの駅名標が掲出される。新デザインの掲出は、22年度からだがデザインは現在、検討中。
新デザイン?? これまた初耳です。設置される駅は札幌圏、函館、新函館北斗、旭川、帯広、釧路、上富良野及び北海道新幹線の駅です。これまた設置基準が謎で、「主要駅」にしては室蘭や北見がありません(まあ主要駅ではないのかもしれませんが)「観光客が多い駅」としても登別・洞爺がありません。「新しくて近代的な駅」としても、釧路駅はちょっと変です。さらに謎なのが「上富良野」です。「富良野」の間違いであることも考えられます。設置は来年度とのことです。
それ以外の駅にある駅名標は、6月から順次、広告部分が撤去または塗りつぶされていく予定になっている。
はい。なんか山線で塗りつぶしが始まってしまいました。「6月から順次」ということで予定通り進んでいるということでしょう。
「それ以外の駅は」とあり、札幌圏を中心にサッポロビールの広告はあと1年ほど残ることになります。
「撤去」という表現もあり、塗りつぶし以外にも動きがあるのか気になります。上側駅名部分と合わせて撤去ということなのかもしれません。
国鉄時代から続いてきた「サッポロビール」入りの駅名標が終了することに伴い、関係者は駅見回りを強化、駅名標の盗難を防止することで駅を大切にしてきた地域住民の思いに応えていく。
はい。よろしくお願いします。
広告料は毎年払っているのか?
今回の駅名標広告の撤去。「いままでサッポロビールは毎年広告料を支払っていたが、ついに終了することになった」という受け止めが広がりました。しかし、果たしてそうでしょうか。私はこの点を中心に、広告撤去の真相に迫っていきます。なお、憶測があります。それを踏まえてお読みください。
駅名標広告の歴史
もともとこの駅名標は、収支が悪化する国鉄の経営改善策として1984年に導入された駅名標です。広告主に駅名標の製作費用を全額負担してもらい、今まで文字だけであった駅名標の下部に広告を掲示するというコンセプトで制作されました。ちなみに北海道の駅名標は後期型のものであり、国鉄書体の中でも高く評価された「佐野書体」が用いられています。この辺りは中西あきこ著「されど鉄道文字」などを読むとわかります。
当時の新聞記事
1984.07.22の記事より
— もみじばし (@momiji_3015) 2020年2月19日
7月末〜8月に、札幌鉄道管理局管内の駅名標約3000枚が新しくなる。サッポロビールがスポンサーとなり、駅名標製作費用の全額を負担したほか、国鉄に三百数十万円の広告収入が入った。青函鉄道管理局も同時期に行われた。 pic.twitter.com/xEFtTNZxX0
以前私は北海道新聞の記事を読んだことがあります。札幌鉄道管理局管内では、1984年の7月末~8月の約1か月間に、3000枚の駅名標が新しくなったようです。サッポロビールが駅名標制作費用の全額を負担したほか、国鉄に三百数十万円の広告収入が入った。とあります。単純計算で、1枚当たり1000円です。なかなか安めのようにも見えますが、ホーローという高価な素材で相当な数を制作していますし、無人駅の掲示が多かったことを考えると、まあこんなものか、という気もします。
ちなみに函館地区では仮乗降場にも掲示されたり、釧路地区では特定地方交通線には設置されなかったなど、いろいろと話題がありますが、今回は省略します。
さて、ここで「三百数十万円の広告収入が入った」と書かれていますが、今後も継続して入るとは書かれていません。書いてあったらその内容もツイートに書いているはずなので・・・ 後日再確認したいですね。ともかく、広告料収入はこの一回きりではないか、という雰囲気がします。
道南いさりび鉄道への譲渡
「サッポロビール」の広告が他社に譲渡された事例があります。その一つが道南いさりび鉄道です。
道南いさりび鉄道の鉄道施設は、「列車運行に必要な施設・設備は、現在、江差線(五稜郭・木古内間)を運行しているJR北海道から譲渡前に必要な整備・修繕や不用となる資産を整理した上で譲り受ける」としています。譲渡額は約16億円であり、同額をJR北海道が支援金という形でいさりび鉄道に支払い、実質無償譲渡という形をとっています。
ここに、サッポロビールの広告については何も記載されていません。議事録にも何もありません。いや、当然といえば当然なのですが、会社が変わるのにサッポロビールとの広告契約を話し合わないというのは不可解な気がします。いずれにしても、ここの議事録に乗るほど大きな話題ではないというのは確かですが。
鉄道記念館への譲渡
今日は、三笠鉄道記念館に行ってました。
— YURA (@yuragawa) 2020年7月22日
想像を超える車両数、SLを走らせるための長い線路など、こんなすごいとことは思わなんだ。
キロ26 104、もうすぐうちに来るんだ(謎
そうか、ここにいたんだ・・・
廃止駅のホーロー看板好きを陥れるに十分な展示も。 pic.twitter.com/EyYzaNgNcW
国鉄民営化前後に廃止された路線、深名線、江差線などで、駅名標の譲渡、および資料館での展示が行われています。(たぶん譲渡だと思います。ちなみにSLなどはJRが町に貸し付ける形を取っています)私がすぐに思いつく例は計呂地、佐呂間、一ノ橋、三笠鉄道記念館、政和、江差などがあります。そこで気になるのが、駅名標がサッポロビール広告とともに保存されているかです。基本的にビールの広告は保存されていない駅が多いんですね。例外的にビール広告付きなのが佐呂間、芭露、一ノ橋、上音威子府*1、滝里(レプリカ)、置戸(昔)、北檜山です。(ほかにもあると思います。思いついたら追加します)
サッポロビールのがひとつもない pic.twitter.com/sNWNmhpVIe
— うた (@avantrascal) 2021年6月9日
なお、近年の廃駅はサッポロビールを含めて保存される駅が増えてきているような印象を受けます。例えば上のツイートの天幕、川湯、弟子屈、ほかには智東、直別・尺別、北豊津、沼牛などです。
それでも江差、吉堀(木古内町郷土資料館)、茶内、清水沢?などはビールなしです。
もし廃線後もビール広告を掲出している場合、何らかの手続きが行われるはずです。特に佐呂間・芭露ともに屋外に掲出されており、広告料を払っている可能性もあるのです。しかし、そんな話は聞いたことがありません。
傾向として、国鉄末期から現代に近づくにつれ、ビール広告付きの駅名標が増えてきている。ただし江差線など、最近でもビール広告がない路線もある。と言えます。
オリジナルグッズ
今日、と云うか「父を偲ぶ日・弔事忌念週間(16日から29日まで)」の休業前の最後の画像は、あの世界最大級の仮想アクター、初音ミクちゃんの故郷の「柱駅名標」のミニチュアとの画像です!!元気でいれば、又、30日(月曜日)に! pic.twitter.com/7LTaY0ewU5
— 岡田 健一(kenichi-Okada) (@kenichiokada08) 2017年1月15日
JRがホーロー駅名標を「駅名標ミニチュアレプリカ」として売り始めたのは2017年ころだったと思います。1枚1000円で最初は主要駅からの発売。徐々に廃駅など、発売駅が拡大されました。
それまでもホーロー駅名標のストラップなどはあったものの、フォントのバランスなどが本物と異なっていました。この「駅名標ミニチュアレプリカ」は、駅名部分のフォントが本物と全く同じと言っていい再現度であり、公式ならではの再現度となっています。
最大の特徴は、しっかりと「本場の味 サッポロビール」が入っていることです。これは「サッポロビール 商品化許可承諾済」などの表記が、きっとあることでしょう。
・・・ない。
JR北海道が最近発売した入場券として、「日高本線記念入場券」があります。基本的に上のミニチュアレプリカと同じデザインであり、2018年以降見ることができなくなっていたホーロー駅名標を入場券にするアイデアはたいへん斬新で素晴らしいアイデアと感じ、私も一冊購入しました。
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20210202_KO_hidakakinen.pdf
うーーーん、サッポロビールについて何も言及がありません。商品や「きっぷ」として販売することへの許可、一体どうなっているのでしょう。
さて、いろいろとみてきましたが、はっきりと書かれた文献が全く見つかりません。道南いさりび鉄道の収支にサッポロビールからの広告収入がある場合、それなりに大きな収入となって表れるようにも思うのですが、それもよくわかりません。
広告として不可解な点
次に、あの「サッポロビール」が広告として不可解である点を見ていきます。なお、私は広告の掲出についての常識をあまり持ち合わせていないため、あくまでイメージとしての「なんか変だな」という点です。
- 観光客が多い駅に掲出されていない
あの駅名標、北海道第2位の乗客数を誇る新千歳空港駅で掲出されていません。おそらく開業時の従来駅とは全く異なるデザインのなかで、掲出しないことを選んだのだと思いますが、広告の観点から考えると非常にもったいなく、不可解です。
また、釧路湿原駅、(臨)原生花園駅、(臨)ラベンダー畑駅などにもありません。臨時駅は通常駅とは異なりますが、臨時駅だからこその掲出の意味があるはずです。が、どこにもありません。あるのはトマム(アルミ製)くらいです。
- 盗難されてもそのまま
ご存じのようにホーロー駅名標は盗難が相次いでおり、渡島鶴岡、渡島砂原、増毛、上厚内、問寒別、雄信内などなどもうあらゆるところで盗まれています。これについてニュースで報道されることもあります。が、記事中に登場するのはJR北海道、またはJR北海道ソリューションズのみであり、サッポロビールが登場したことを見たことがありません。また、留萌線の駅名標について「いたちごっこになる」という理由で再設置はされませんでしたが、駅名標の再設置についてサッポロビールとの議論が行われたようにも見えません。
※くれぐれも駅名標や駅施設の窃盗行為はやめましょう。
- 突然撤去された日高線
日高線不通区間の駅名標は、2018年の夏に盗難防止策として撤去されました。(どこかの新聞記事に、『「駅名標を撤去するとは廃線のようではないか!」とどこかの町長が抗議した。よく聞くと、JR北海道が盗難防止策として撤去したいと申し入れたのだった』という記事があったんですよね。いま見つけることができません)ともかく、それ以降日高線の不通区間にビール広告はなくなってしまったのです。これについても、サッポロビールと協議したという形跡は見受けられません。根室線を含めて、不通区間の広告はどうなっているのでしょうか。特にホームに入れない落合の扱いは気になります。(落合駅のホーム、最近チェックしていないですが、とうとうホーロー撤去されましたっけ?後日確認します)
- 駅によって差がありすぎる
皆さんご存じだと思いますが、「きたみきたみきたみきたみきたみ」のような駅が、一日数人の駅においても存在します。その一方、ある程度大きい駅でも数枚しか設置がない駅もあります(例:仁木駅)広告媒体としては全く駅の規模による枚数があっていないのです。もし本気でビールを宣伝したい場合、こんな差があるのはどうなのかと思います。
私の考え
さて、ここまで見てきました。根拠が少し乏しいながら、私は「サッポロビールはJR北海道に、広告料を毎年支払っているわけではない」「設置費用の負担、及び初年度に支払われた額のみなのでは」と考えています。通常の広告とは趣旨が異なる点を差し引いても、明らかにビールを宣伝するという広告効果が薄く、さらに盗難や譲渡などの際にサッポロビールがかかわったという話が聞こえてこないからです。
ではどうなっているか。あの駅名標は全て、サッポロビールからJR北海道(国鉄)に「寄贈」のような形をされているのではないか。だからこそグッズや入場券としてある程度自由に販売ができるのではないか。と考えています。
札幌圏でデザイン更新?
さて、報道においてもう一つ重大な点が、「札幌圏を中心に、駅名標のデザインが変わる」ということです。確かに近年駅名標を巡る環境は大きく変化し、多言語表記など、全ての人にとって分かりやすい案内がより重視されるようになりました。現在の駅名標は「すみ丸ゴシック」「佐野書体」という非常に読みやすい書体が使用されているものの、多言語表記、駅ナンバリング表記などは行えていません。駅名標の寿命というよりも、時代に合わせた新しいものに取り換えなければならないというJRの考えがあるような雰囲気を感じます。
追記:この説は誤りの可能性も出てきました。詳しくは次回の記事に記載しています。
考えられる2つの理由
このサイン更新。そして広告の撤退。2つの理由が考えられます。
- JRのサイン更新計画を機に、全駅のスポンサーをやめる
今回の撤退はサッポロビールの広告事業の見直しです。JRの計画によってサインを更新するとなれば、また札幌圏の全駅で駅名標の製作費用を負担しなければなりません。 そこでこのタイミングを区切りに、JRが単独で駅名標を製作することになる。
- JRのサイン更新計画を機に、地方駅のスポンサーをやめる
気になる記事を見つけました。
この記事はリアルエコノミーの記事を基にして書かれたと思われ、独自の取材等は行っているようには見えません。しかし、この記事を読むと、「サッポロビールの広告における変更は以下の通り」として、「主要駅や利用の多い駅の駅名標は、新デザインの広告を採用」とあります。この文章、読み方によっては「主要駅や利用の多い駅の駅名標は、新デザインのサッポロビールの広告を採用」と取れます。・・・取れません?
つまり、来年以降の札幌圏・主要駅には「新デザインのサッポロビールの広告」が設置されるということです。サッポロビールが完全に撤退するわけではありません。「6月からの塗りつぶし作業」が札幌圏を中心に除外されるのもこのためである。
代わりに地方の駅では、いつか訪れる駅名標の更新費用を負担しないことを今のうちに決定。地方の駅のスポンサーをやめる。悲しいことではありますが、「広告施策の見直し」としては常識的なことかと思います。
記事の表現のミスも考えられますが、私みたいな個人ブログよりもしっかりした情報ナビだと思います。最初読んだ時あの記事をこう捉えるか〜と驚きました。
私としてはこの2通りを考えています。なお、前者は「新デザインの広告を採用」という記事に、後者は「寄贈され、一般的な広告ではないのになぜ塗りつぶす必要があるのか」「やっぱり毎年広告料を払っているのでは」という矛盾点があります。この部分は、ちょっと謎です。
駅の風景も新しいものへ・・・
仁木で下車。
— たかちん/旅する応援団員 (@takachin_9912) 2021年6月11日
やっぱりもう真っ白でした…
よーく目を凝らすと一応文字が見えるので、交換ではなく塗り潰しであることがわかります。
うーんやっぱり目に寂しいというか物足りないというか…この風景に慣れるまでの辛抱ですかね。 pic.twitter.com/wejoqzTsF1
始まってしまいました塗りつぶし。いや〜残念ですね。しかし、とても丁寧な塗りつぶしであり、ネジも交換されています。個人的にはもっと雑な作業を想定していたので、ちゃんと大切にされているなぁということは伝わってきます。残念ではありますが、意外となれるのも早いのではと思っています。今までの駅名標の新しい姿も、全駅記録を目指して頑張っていきたいと思います。
さて、札幌圏を中心に新しいデザインが導入されるようです。新しいデザインがフォントのミスがなく、見やすく、北海道の新たな駅風景として親しまれることを切に願っています。どんなデザインか、果たしてサッポロビールの広告は入るのか。ちょっと楽しみです。
つづく。続きはこちら。