もみじの研究ノート

駅名標の奥深い世界へようこそ。

同じバス代行区間でも - 日高線と根室線

今回は初めての「地域の公共交通」系の話題を本格的に書きます。私はこのテーマには興味があり、Twitterなどでは時々意見を述べたりしています。ただ、まだまだ地域の現状や抱えている問題点など、勉強できていない部分が多いと認識しています。認識の間違いや、なんだこれはという意見もあると思います。何卒ご了承ください。また、私の意見などに不適切な点、誤解している点、および記述の誤り等があれば、教えていただければと思います。

f:id:momiji_3539:20200726113625j:plain

日高線代行バスの一時代を築いた酒井観光バス(日高門別駅 2016年5月)

現在JR北海道には、自然災害による運休区間が2区間あります。日高線鵡川~様似間、根室線東鹿越~新得間です。JRが単独で維持することが困難な線区にも指定されており、いずれの区間も輸送密度が200人未満の赤線区となっています。つまり、JR北海道で最も乗客が少ない区間というわけです。日高線はいよいよ廃止が正式決定しようとしている反面、根室線については自治体が協議を拒否しているわけではないですが、協議はほとんど進んでいないのが現状です。

先日、ある一枚の写真が話題になりました。

草で覆われ、ルピナスの花が咲く根室線落合駅の様子です。落合駅は廃駅になったわけではなく、現役の駅でこのような光景が広がっているのはなかなか衝撃的なことです。

 

なぜ落合駅だけ? 

それと共に、ある疑問が浮かんできます。他の駅でこのような光景が広がる駅は、基本的にないということです。なぜ落合駅だけ、このように草に覆われているのでしょうか。

原因として考えられるのが、落合駅周辺の被害が甚大であり、線路の管理ができていないことと、この駅のみ唯一釧路支社の管理であるということです。

https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161013-1.pdf

一連の台風による石勝線・根室線の災害復旧の状況について

この資料によると、幾寅駅~落合駅間は保線車両などが走行できなくもないように見えますが、落合駅~上落合信号場間は線路上の移動がままならないほど線路が被害を受けています。おそらく、この区間の管理は新得駅を基点に行われていると思われ、新得駅側からこの駅に保線車両等が立ち入れず、管理ができなくなっているものと思われます。落合駅構内は台風の際、線路内に土砂が流入しました。その土砂の撤去もままなっていないようです。

また、落合駅には釧路支社と本社の境界の駅であり、駅の管理は釧路支社の駅の可能性があります。その他の災害区間はすべて本社区間であり、駅の管理方法が支社によって異なっている可能性があります。

 

ちなみに…それ以外にも異なる点が

「駅の管理方法が支社によって異なっている」点として、駅ホームへの立ち入り、ホーロー駅名標の有無も異なっています。

落合駅には現在、ホームへの立ち入りを禁止する看板が設置されています。駅舎横の柵に設置されており、これは「本来のルート以外からホームに立ち入ることは禁止する。ちゃんと正規のルートで入れ」という意味なのか「ホームに立ち入ることは一切禁止する」という意味なのかは不明ですが、2012年時点では設置されていなかったことから、後者の意味の可能性が高いです。ちなみに駅舎とホームを結ぶ扉は、以前は解放されていたものの、最近になって施錠されたようです。また、跨線橋は完全に閉鎖されており、向かい側のホームに立ち入ることはできなくなっています。本社区間跨線橋のある休止駅がないため、この点は比較ができません。が、本社区間で構内踏切の閉鎖などは行われていません。ホームが一部崩落している東町などを除き、自由に立ち入り可能です。

また、落合駅には現在「ホーロー駅名標」が設置されていますが、幾寅駅にはありません。これも支社による違いだと思われます。日高線の各駅では、2018年7月頃にホーロー駅名標の盗難を防止するため、休止区間のすべてのホーロー駅名標が撤去されました。(当時の北海道新聞に、2018年6月末にJR幹部が日高町役場を訪れた際、「鉄道マニアの盗難対策のため、駅名板を外しても良いか」という発言をし、町長は「廃線だと誤解されかねない」と顔をしかめた、と報道されています。なお、この発言の「駅名板」に、隣駅も表示するタイプのものが含まれていたのかは不明です)このタイミングかどうかは不明ですが、幾寅駅でも同じ対応が行われたものと思われます。

 

それ以外の駅では

除草の話題に戻ります。同じ根室本線でも、幾寅駅のホームには雑草がほとんど生えていません。日高線の各駅も、基本的には雑草がない状態が維持されています。では、それ以外の駅ではなぜ雑草がないのか。それは、JRによって除草剤が散布されているからに違いないと思います。すでに休止からは3~5年が経過しており、まったく手入れがされない状態では、たとえ海沿いの区間でも、雑草が生えないはずがありません。

2015年から運休が続いている日高線では、保線作業員がトロッコに乗って線路の状態などを確認する作業が時々行われているようで、目撃されている方が複数います。新聞や自治体の首長はいつも「線路を放置している」という発言をしますが、実際にはいつでも列車の運転を再開できるように、最低限の整備は続けられているのです。

f:id:momiji_3539:20200726113353j:plain

2018年8月の日高幌別駅。雑草は短く刈られている。

JR北海道は、グループの「経営改善に関する取り組み2019年度第4四半期 報告書」において、最安値除草剤への統一により、資材調達コストの削減を図ったと記載されています。印刷は両面印刷を基本とするといった、JRの涙ぐましい経営努力の一環です。全道2500km、複線区間では倍の面積、少なくなったとはいえ、まだまだ1日1本のために残されているような側線を含め、膨大な面積を除草しなければなりません。たかが除草剤、されど除草剤なのです。

 

除草は沿線自治体の要望?

日高線の沿線自治体は、JR北海道のあらゆる提案に文句をつけることで有名です(汗) 余談ですが、過去の新聞記事で、日高線の各駅に設置されている駅名板を、盗難対策のために撤去したいと相談したところ、「日高線廃線ではない。駅名板を撤去すると廃線と誤解される。あり得ない」と激しく反発した、というような記事を目にしたことがあります。(道新だったと思います。2018年頃だったと思いますが、日付は忘れてしまいました)この記事の「駅名板」は、他の路線でも盗難が相次ぐ「ホーロー駅名標」を指していたものと思われますが、隣駅を表示する駅名標を含め、すべて取り外そうとしていたのかはわかりません。もし沿線自治体の反発の効果で、現在も駅名標が残っているとしたら、それは感謝です。沿線自治体の言動で唯一「ありがとうございます~」と言いたい点ですね()

 

日高線廃線のように見せたくない

さて、そういうわけで、日高線の沿線自治体は日高線廃線のように見せたくない」という思いがあります。自然災害で突然列車の運行が停止し、JRが復旧せず放置し、地方を切り捨てる無責任な態度だと思っているわけですから、いや無責任とは思っていなくても、この思いはまあ当然のことかとは思います。日高の沿線自治体を訪れるとき、道路から草ぼうぼうの鉄路がずっと見え続けることは、地域にとってもみっともないことだというのは確かにそうであり、線路を除草してくれというのも沿線自治体の要望というのも一つあるのではないか、と感じます。根室線沿線の自治体は、そのような要望はそれほどされていないのでしょう。もし落合駅のような駅が日高線にあれば、沿線自治体は絶対に批判しているはずです。それか、そんな状況になっているのを知らずにスルーされるか。

 

まとめ

なぜ落合駅は雑草に覆われた光景が広がっているのか、という疑問から、支社ごとの駅管理の違い、休止区間の線路は管理されているということ、そして日高線根室線の違いを見てきました。支社の違いに加え、「日高線廃線のように見せたくない」という沿線自治体の声からこのような違いが生まれているのだと、私は考えています。

さて、その日高線の沿線自治体はもう一つの声があります。あるような気がしています。それは、「JRが日高線復旧を放置しているように見せたい」ということです。次回、次は日高線の中心に取り上げ、このことについて書こうと思います。つづく。

つづきはこちら