もみじの研究ノート

駅名標の奥深い世界へようこそ。

抜海駅廃止に関する市議会の議論 2

抜海駅廃止に関する市議会の議論

前回に引き続き、抜海駅のお話です。赤字は私が重要だと思ったところに勝手に引いたものです。また、誤字脱字等が多いと思います。

 

吉田大輔議員

続きまして大項目の2点目 JR抜海駅の存廃についてお伺いをいたします。コロナ禍中の4月6日 JR 宗谷線稚内市名寄市など7市町にある13の無人駅が来春に廃止になるという報道がありました。このニュース記事によると、宗谷線の特に利用が少ない29の無人駅について、 JR北海道は昨年12月地元自治体に対して廃止をするか自治体負担で存続をさせるかを判断するよう求めその結果13の駅の廃止はやむを得ないという結論に至ったことが、宗谷本線活性化推進協議会のまとめで分かった、という旨のことが記載報道されておりました。

稚内市にある無人駅は抜海駅と勇知駅ですが、今月2月半ばに地元の方から、勇知は高校生や高齢者の利用があり存続をするが、抜海駅が廃止の対象となっていて市からクトネベツ、抜海両町内会に協議の話が来ていると伺いました。抜海駅は大正13年6月25日当時の省線鉄道省天塩北線の現在の南稚内~兜沼間の開通に伴い開業したとのことです。昭和56年には1日35人という乗降客数、平成25年から30年まではJR北海道による特定の平日調査日における乗車人員の平均が1.4人、平成26年から30年の5カ年平均の1日の駅別乗車人員は3人以下というくくりになっております。ちなみに廃止または地元負担による存続の対象として挙げられた駅の多くは、この5カ年平均の1日の駅別乗車人員が1名以下で、宗谷本線だと幌延町、中川町に多く存在をしています。また抜海駅の隣の勇知駅の数値は10名以下の区分となっておりました。JR北海道はすでにここ何年にもわたり、利用者の極端に少ない駅を廃止してコスト削減を図ってきていますが、まず1点目として、今回報道された件について稚内市に対して、いつどのような話が JR北海道からあったのか伺います。また地域の方によると抜海駅を存続させる場合、稚内市が年間130万円前後の負担をすることになるとのことでしたが、実際の金額がいくらになるのかについても合わせて伺います。利用者の少ない駅をどうするかということについては費用対効果から考えると廃止ということになります。しかしながら公共交通機関としての役割、観光振興の一助となる役割を考えると、簡単に廃止という結論に落ち着けることはできません。観光振興に関してはこの後同じ会派の中村議員から質問がありますのでここでは触れませんが、地域の足公共交通としての役割として現在の抜海駅利用者は先に示したような利用者数が出ておりますが、特定日に基づく乗車人員の数値のみでは正確な乗降客数の把握とはなりませんし、話はそれますが営業係数による数値も例えば、青春18きっぷや北海道レールパスなどによる駅利用などによる利用者は数値に反映されないため、北海道の場合は特に注意が必要だと思っております。自動改札による出入札記録ももちろんありませんし、1日あたり上り4本下り3本の列車の乗降客を毎日毎回カウントするというのも、人員や設備便から考えると合理的ではありません。先に述べたような数値を参考としていくしかないわけですが、自治体として今後のことを考える際には逆に自治体だからこそ把握できる数値もあります。それは駅周辺地域のこの先の人口動向がどのようになっているかという点です。その地域に住んでいる年齢層から将来の駅利用者をある程度を利用することができると思いますので、駅の存廃を考える際には考慮をする必要があると思います。今後通院等で利用する可能性のある高齢者がどのくらいになるのか、高校生になって通学で利用する可能性のある世代がどのくらいになるのか把握している数値があればお示し下さい。

またあわせて駅周辺地域の反応意見がどのようなものであったのあるのかという点と、インターネット関係の、インターネットの鉄道関係サイトによれば市に存続についての意見要望が全国から寄せられているという内容の記事がありましたが、実際にはどんな、どうなっているのかお伺いいたします。各種報道によれば今回抜海駅廃止という方向で地域と協議をしているとのことですが、そもそも JR北海道が所管をしている駅の存廃についての協議を、なぜ地元自治体が駅周辺地域住民としなければならないのか少々疑問に思います。筋道からするとJRが駅周辺住民に対して状況を説明し、JR としてどのように考えているのか、地域住民はどのように考えているのかなどを協議し廃止という結論になればそのままですし、存続ということになればJRや町内会などが自治体に対して維持費用の支援を求めるというのが本来なのではないかと私は思っております。本論から外れた質問になるかもしれませんがこの点について市長はどう思われますでしょうか。最後に駅の存続にかかわる費用について、稚内市の予算書を見ていますと、負担捻出することが非常に困難なものであると私は思いませんが、存続への方向転換に切り替えることはないのかを含めて市長のお考えを伺います。

 

工藤市長

次にJR抜海駅の存廃についてのお尋ねです。まずJR北海道からの本市への説明ということでありますが、昨年12月に宗谷線の沿線市町村などで構成する宗谷線、あー宗谷本線活性化推進協議会を通じて示されたところであります。北海道からは徹底した経営努力が求められる中、過去5年間1日平均3人以下の極端に利用の少ない無人駅について、廃止または駅を維持する場合は、関係自治体の負担により維持管理を行ういずれかの方針を、令和2年3月末までに示してほしい、また廃止の場合は令和3年3月とするものであり、現状を継続する場合は、抜海駅の維持管理費用として除雪費用を含め年間124万6000円と見込まれています。ただこれには不定期の修繕料等は含まれておりません。抜海駅の利用状況でありますが、地域の方からは、不定期ではありますが通院のため1人の方が利用されていると聞いておりますし、高校生の通学は現在お1人で来年度は2人になると把握しております。超高齢化社会ですから、市内への通院等の人数は今後増加するとは考えておりますが、昨日もお話した通り、これまでもそうでありますが利便性から考えて、それがそのままJR利用につながるとは考えにくいと、そのように判断しているところであります。

次に駅周辺住民等からの反応というお尋ねであります。抜海駅を目的に観光客が訪れていることや駅の維持管理費をなぜ市が負担できないのか、という存続を望む意見をいただいている一方で、抜海駅を利用するには車での送迎が必要であり、自宅前で乗車可能なスクールバスなどの代替交通手段の方が便利で、家族の負担軽減にもなると、そんなご意見もいただいているところであります。また全国の鉄道ファンなどからメールなどにより、今年4月から先週末までの間に46件の観光目的での存続を要望する意見などが寄せられているところであります。つぎに本市の考え方というお尋ねでありますが、昨日もお話をいたしましたが、初めに抜海駅につきましては地域の方の定期的な利用として、今も申し上げました現在高校への通学での利用がお1人、また地域の方からは不定期で通院のため利用されている方が1人と、そのように把握をしており現場の抜海駅は必ずしも地域公共交通が持つ地域の利便性を高めるというその役割を果たすことができていないという具合に考えております。市としてはJR北海道の方針を受け、地域住民の足を守るという観点で、これまで地域と協議してまいりました。したがって本市としてはJR北海道が示す維持管理経費を負担できるかできないかというより、将来にわたって地域住民の足、利便性を確保すると、そのための交通体系の構築を図りたいんだ、そのように考えているところであります。

 

吉田大輔議員

続いてあのーJRの関係、抜海駅関係なんですけれども、いただいた答弁の中で、駅のその現在の利用に関して、まあ今1名通院で1名、高校生で今1名、来年にはまあ2人になる予定だということだったんですけれども、あのまあ、千葉議員での質問の際にもまた、いましがたもありましたけれど、まぁその地域の公共交通、今後そのどうしていくのか、現状ではまあその、必ずしも役目を果たせていないと、まあいう旨のご答弁があったんですけれども、より長期的な人数、あのまあ、おそらくあの、ちょっと本文中でも触れましたけど、自治体であれば、そこの地域の人口の状況ってわかると思うんですけれども、この先高齢者の方がどのぐらいに増えていって、あるいは今保育園に小学生がどのぐらいいて高校生になる見込みが何年後にはこのくらいだっていうのが、わかるかと思うんですけれども、その人数についてちょっと教えてください。

 

まちづくり政策部長

通学生の今後の状況というお話でございます。まず先ほども答弁したとおり現在は1名、それと来年度2名ということなんですが、あのー現在の小中学校の就学状況を勘案しますですね、再来年も2名、その後一時的にちょっと4名となる時期がございますけれども令和8年度から減少しましてですね、その後は1名というような状況になるというふうに把握をしてございます。

 

吉田大輔議員

はいありがとうございます。まあなかなかあの、昨日の千葉議員とのやり取りをうかがってましても、まあ方向転換をされるというのはなかなか厳しいのかなという印象を受けましたけれども、まあ今部長から答弁いただきましたけど、まあー令和8年までは少々上昇に利用しこうなるだろうという見込みがあるそうなので、石北線旧白滝駅でしたがあそこはの一人の高校生利用者のために廃止を jr北海道が待ってくれたという事例もありますので、ぜひもう少しそういった状況を踏まえたですね、対応に切り替えていただければなと思いますけれども、最後にその点に関してだけちょっとお答え頂ければと思います。

 

工藤市長

お答えをさせていただきます今回の件に関しましては昨日もお話をいたしましたが、この件について、担当課から報告を受けたときもともと今もずっと説明しておりますように、利用者が少ないがゆえにこういう話になっているので、まずは利用者を上げる努力をしないといけないだろうと、まあ急に上がったからっつってJR北海道が納得するかっていうのは、別にしてですね、そういうお話を地元と地域とよく協議しなさいと、いう話をしたんですが、気持ちはよくわかるんでありますが、地域の人口今もお話の通り限られている現状、それを考えるとなかなか難しい話ではあるんでありますが、残念ながら地域からはそれはできないと、いうお答えをいただきました。理解はできます。でも昨日来説明しているように、我々としてはその駅があるかないかよりも、地域の人の足を守りたい。そのためには一体どういう方法がいいんだといういうことを、いろいろ検討して昨日お話したような、次の案の提案とさせていただいたということであります。あのそれがすべてかどうかはこれからもまた協議を重ねる訳でありますから、どんな話になるか分かりませんけれども、我々としては一つ一つ手を尽くしながらぜひご理解を賜ればと。互いに地域の将来を考えていきたい視点でこれからも取り組んでまいります。

 

続いて、中村公博議員の質問です。

 

中村公博議員

大項目3点目になりますが、JR宗谷本線のアクションプランについて小項目、観光資産としてのJR抜海駅の活用についてでございます。昨年4月に公表されたJR のアクションプランに基づいて、宗谷本線を維持活性化していくために、JRと沿線の自治体や関係機関が一体となって取り組む取り組むべきこととしては、宗谷本線活性化推進協議会が主体となって、活動をしているところと思いますが、昨年7月の風っこそうや号の運行は報道にも取り上げられてきたところです。しかしもう一方ではコスト削減の観点から利用者の少ない駅については、今後の維持管理などについて関連自治体等との協議が進められており、稚内市の区域にある4つの駅のうち抜海駅については廃止また駅舎の管理を自治体でという改善案が示されております。この間、地元住民に説明会を開催してきたとのことですが、新聞紙上でも何度か取り上げられている通り地元住民においてはJRの利用は少ないものの、駅舎の周りの花壇の整備や少数でも観光客の受け入れがあるなど、何らかの関わりを持っていることから宗谷本線自体がなくならない限り、存続を希望する旨、説明者に伝えていると聞いております。今後においても地元住民からは、廃止に向けた同意はされないものと推察されます。昨年音威子府村が開催した宗谷線のフォトコンテストでは、抜海方面を走る風っこそうや号を、ドローンによる空撮写真が最優秀賞になるなど、宗谷線稚内市以外の人たちにとっても魅力あるロケーションだと思います。鉄道ファンに限らず、秘境駅としての魅力があり、映画やドラマのロケ地でもあります。稚内キタカラには稚内周辺を案内する観光パネルがありません。抜海駅は市の観光パンフにも載っておりません。抜海駅の活用について、地元住民や観光協会と協力し合い、宗谷線各駅の駅や周辺の紹介、他の観光資源とセットで紹介するなど特異な観光資源としてもっと活用できるものと思いますが、どのように考えているかお聞かせください。

 

工藤市長

次 JR宗谷本線のアクションプランについてのお尋ねであります。先日じゃない、昨日からこの件については色々お話をさせていただいておりますが、観光資源としての JR抜海駅ということにつきましては、えー当然、抜海駅およびその周辺、お話の通り、魅力を感じて来訪される観光客などがいることは承知をしておりますが、駅の所在地は昨日もお話した通り、抜海市街地から2キロ離れており、住民の方に方にとって必ずしも利便性の高い駅にはなっておりません。この問題につきましては地域の皆さん、あるいは観光客も当然そうでありますが、地域の皆さんが生活していく上で、将来にわたって必要な、しかも利便性の高い交通手段を確保していくということを、ぜひ優先させでいろいろな協議に取り組んでいきたいとこのように思っております。

 

中村公博議員

3つ目のJR抜海駅の関係ですが、答弁では地域の利便性、交通機関としての認識が強いようでありますけれども、JRは奇妙ですから、利用頻度や維持経費の面からどうしても廃止に向けての議論が先行していきます。まだ協議中とのことでございますけれども、稚内市側とすれば経費を節約しながらも利活用して、人がたくさん来てもらうにはどうしたらいいのか、そんな議論を優先させるべきではありませんか。先般市が公表したまちひとしごと創生総合戦略においては、基本目標に本市の魅力や特色を広く発信して新しい人と資金の流れを作るとありますし、さらに新たな魅力を発信し観光ニーズを捉えた取り組みを進め、交流人口の拡大を目指すとしております。同課は抜海駅についても、観光資源としてそのような取り組みを活性化させ、維持していいただきたい。そのようにお願いして私の質問を終えたいと思います。

 

最後に個人的な感想

私は抜海駅は存続してほしい派の人です。宗谷本線を観光路線にするにあたり、抜海駅を活用しないで何をするんだ、と考えています。宗谷本線の無人駅の主な利用者は住民もそうですが、何より鉄道ファンです。存廃にあたっては路線全体で一定の方向性を示し、鉄道ファンをはじめとした観光客の集客が見込まれる駅は、地元の街だけではなく、他の市町村とも協力してお金を出し合い、存続していくのが一番良いと思っています。この観点から見ると、抜海駅は「稚内市抜海地区の住民のための駅であり、その住民のために市がお金を出す」のではなく、「全道全国の鉄道ファンのための駅であり、宗谷本線全体の財産となる駅である。その駅のために、沿線全ての市町村がお金を出す」というのが一番良いのではないかと考えています。

・・・はいいとして。

「地域住民の移動の利便性を高める」ことに重点を置く稚内市は、観光振興や地域の愛着について一定の理解を示すものの、駅を観光に生かすことは考えていないんだなという感じです。46件寄せられた鉄道ファンからのメールも、あんまり真剣に読んでなさそうだなぁ・・・という気はします。市長は「乗り合いタクシーに観光客を乗せれば観光客にも便利になる」というようなことを言っていますが、「駅」そのものが観光資源なのです。駅がなくなったら観光客半減しますよ?? 市長が廃駅後の抜海信号場を観光地にしようと考えているのか、それとも抜海にアザラシを見に行く観光客を考えているのかはわかりませんが、駅そのものが観光資源になっている現状を理解していないのではないかと思います。

ただし稚内市長の答弁は真っ当であり、正しいことを言っている気がします。鉄道が、駅が、愛着がどうのこうのではなく、大切なのは「地域住民の移動の利便性」や「持続可能な交通体系の構築」なんですよ。確かに。この件について、北海道では「鉄道は大事だ。乗らないけど残せ」系の意見が多すぎると思っています。この点、稚内市は責任ある考え方をしています。

・・・でも。それだと宗谷本線(の普通列車)は残らなくなる。

「地域住民の移動の利便性」を追求した場合、どの町でも町営バスの増便・充実を行うでしょう。幌延町でも、問寒別と幌延を結ぶ「患者輸送バス」の増便・充実を行うはずです。でもそうなると、宗谷本線の普通列車は、宗谷本線の無人駅はどうなるでしょうか。現在ごくわずかでではあるものの役割を果たしている、「地域住民の移動」という役割が、ますます小さくなります。結果、普通列車の存続がますます厳しくなります。

せっかく鉄道があり、せっかく普通列車が走り、せっかく無人駅が細かくあるんです。せっかくならば、少しでも活用する方向にならないだろうか。私はそう考えてしまいます。

そのうえでダイヤが不便となれば、普通列車の増便をしてもいいんです。もっと鉄道を使おうとなれば、現在の患者輸送バスを問寒別発幌延行きの列車に置き換えてもいいんです。さすがにそれは難しい? 確かに問寒別に折り返し設備を設けるのにはお金がかかりますね。幌延に車庫も必要になりそうですね。それが、地域の細かいニーズにこたえることが難しい、鉄道の欠点です。だからこそ、今の宗谷本線は難しい立場に置かれているのだと思います。

思い切って石勝線のような特急専用の路線にするのも手。地域輸送は町営バスが行えばいい。でも、それで宗谷本線は観光路線になるのか。未来につながるのか。それが問われているのだと思います。そしてその象徴でもあるのが、この抜海駅の存廃なのだと思います。

今回の議論をみて、ああ~これは残らないな・・・と思ってしまった私ですが、これからも注目していこうと思います。駅の廃止に地域住民が反対するなんて、めったにないことなんですよ。これまでに全く例がないのでは?というレベルで。個人的には、宗谷本線を「観光路線」として生かしていくにあたり、良い判断を下してほしいと思いますが、難しいかなぁ・・・。