もみじの研究ノート

駅名標の奥深い世界へようこそ。

極端にご利用の少ないトイレ 廃止検討

※終始トイレの話題しかしません。画像もあります。閲覧には十分ご注意ください

利用の少ない駅トイレ

先日発表された、JR北海道のローカル線を維持・活性化するためのアクションプラン。釧網線花咲線の「経費節減」の項目に、利用の少ない駅トイレの利用停止を検討するという、これまでに見たことのない項目が追加されました。はぁ~ついにここまで削減に来たかと。

 なお、この項目があるのはこの2つの路線のみ、つまり釧路支社のみです。他の支社ではこの点にいまのところ言及がありません。まだやるつもりはないか、もう廃止し終わったかのどちらかです。

 無人駅のトイレ廃止。人によってはそんなのあたりまえの経費削減策と考える方も多いでしょう。また、汚いから使ったことがない、確かに不要ではという方も多いでしょう。はい、私もその一人です。今回は、そんな無人駅のトイレに注目して見ていきます。

 

JR北海道 無人駅トイレの現状

といっても私は特に駅のトイレオタクではなく、無人駅のトイレについて熟知しているかといえばそうではありません。私が写真を持っていたり、思いつく事例をいくつか紹介します。

 

国鉄のにおいがムンムンするトイレ

函館線 駒ヶ岳駅

函館支社に位置する駅です。駅舎は駒ケ岳をイメージしたようなそれなりに新しいものが設置されていますが、トイレは別棟です。以下の写真は2018年3月に撮影したものです。

 

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右側が別棟のトイレ。どちらも外観はきれい。

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トイレ内部。蛇口に「使用できません」の文字が見える。

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個室。果たしてここに立ち入って良いのだろうかという雰囲気。

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小便器。スターライト製トイレもびっくりの古さ。

これは国鉄時代にはよくあった形態のようで、映画「鉄道員」の幌舞駅でもそうでしたし、深名線鷹泊駅の傾き、最終的に2018年に倒壊したトイレ棟、中興部駅のトイレ棟などは有名でしょうか。駒ヶ岳駅にはそれが2018年時点で残っていました。この時代にこんな建物が存在していて、しかも入ってよいのかという、驚くほどの古さを感じさせます。

函館線 光珠内駅

札幌圏から2駅ですが、ここでも2020年時点で、別棟のトイレというものが残っています。「便所」の看板がいいですね。

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雪が積もる光珠内駅のトイレ。

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トイレ内部。年数を考えると清潔なのかもしれない。

宗谷線 下士別駅

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家の玄関のような下士別駅

ローカル線の駅舎や待合所は、地元の自治体や町内会などが建設した駅が非常に多いです。例えば、有名な糠南駅も待合室は地元が設置したものです。そのような駅の中でトイレも併設されている駅として思いつくのが下士別駅です。維持管理は地元が行っていたのでしょうか。頭が下がります。

JR宗谷本線 下士別駅 仮乗降場が前身なのに駅舎もトイレも駐輪場もある駅 2020.7.24 - YouTube

駅のトイレが動画で紹介されているケース、意外とあります。気になる方は調べてみてください。(私は気になりません)

このように、国鉄時代からそのままなのでは、というトイレが複数残っています。これらの駅でも定期的な清掃などが続けられていると思うとすごいことです。今回の見直しは当然ともいえます。

 

自治体がトイレを設置した駅

日高線 東静内駅

1994年の改築。東静内駅といえば駅の半分を占める「公衆便所」です。

なんと車いす対応であり、JR北海道車いす対応トイレが設置されていた駅としては、最も駅の規模が小さい部類に入るのではと思います。ツイートではJRの持ち物として紹介されていますが、駅舎内・便所内双方に新ひだか町の貼り紙が掲出されていることから、この駅も全体を町が建設し、維持管理は廃止まで、そして現在も新ひだか町が行っているものと思われます。(しかしこの駅はあまりいいイメージを持てません)

札沼線 札比内駅

駅の脇にきれいなトイレが設置されています。2003年にはあったようです*1

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これは憶測ですが、札比内駅の駅舎内にトイレの跡などはないことから、昔は別棟だった→別棟のトイレが老朽化に伴い廃止される際、町が代替のトイレを建設したことが考えられます。

このトイレは札沼線廃止と共に「利用者の減少」等を理由に閉鎖されましたが、住民の要望などから利用を再開しました*2トイレがないと困るという住民はいるということです。こんな入札情報もあります。

なお現在、札比内駅札沼線代替バスパーク&ライド用の駐車場として活用されています。

石勝線 夕張駅

3代目夕張駅は、実はローカル線活性化の起爆剤として移設されたものです。駅舎の管理は当初マウントレースイを運営する企業が行っていましたが、経営悪化により2002年に撤退。その際ホテルと共に駅舎は夕張市の所有となりました。しかしご存知の通り夕張市財政破綻。一時トイレの管理費が賄えず、閉鎖される事態となりました。

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廃止直前のゆうばり駅待合所。「夕張 観光案内センター」は「市」の文字が抜けており、運営母体が変わったことを意味している。

その後、管理を地元観光協会に委託するなどの変化があったのち、最終的には民間企業の寄付によりトイレを再開放することになった経緯があります。管理者の財政悪化によって利用者に大きな影響が生じた駅と言えます。

釧網線 知床斜里

大規模な駅の事例を一つ紹介します。この駅は2007年の改装。この際にトイレをJR施設から町施設への切り離しが行われました。

知床斜里複合駅舎の建設工事着手について | JR北海道

http://web.archive.org/web/20070930015125/http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2007/070509-5.pdf

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なおこの形態は利用者にもメリットはあり、一般的に町設置のトイレのほうが、JR設置のトイレより明るくきれいな駅が多く、車いす対応や石鹸などの設備も充実しているイメージがあります。

事例はまだまだあると思うのですが、この辺までにします。編集していてなんとなく思うことは、地域が建設する駅舎や駅のトイレは鉄道設備の「上下分離」の先駆けなのかなと。また、当時からうまくいく自治体、いかない自治体それぞれあったと思いますし、その本気度の差は駅の雰囲気に現れます。地域や自治体が駅舎・トイレの管理をしっかりやっている駅は明るく感じますし、そうでない駅はそうではありません。

 

近年改築された駅

函館線 大中山駅

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大中山駅の構内案内図。フォントはヒラギノ角ゴシック。

大中山駅は2013年に駅舎が新しくなりました。その際、JRは経費削減策としてトイレを設置しない方針でしたが、これに七飯町は反発、町がトイレを設置することになりました。駅舎内には、確かに七飯町の貼り紙が見られます。トイレはウォシュレット付きという、JR設置では考えられない豪華なものです。

宗谷線 比布駅

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2016年に駅舎が新しくなった比布駅。当初JR北海道は新駅舎を、規模を大幅に縮小したものとする方針でした。しかしこれでは「街の顔」である駅の賑わいがますます衰退してしまうと考えた比布町はJRと何度も交渉。最終的に町が駅舎を建設することになり、トイレや交流施設などを備えた魅力的な駅舎に生まれ変わりました。

室蘭線吉原駅

北海道初の橋上駅舎の撤去が開始されたのは2020年1月です。撤去費用・新駅舎設置費用は、報道を見る限りJRが負担したとみられます。跨線橋撤去に伴う通路新設や駐輪場は白老町が負担したようです。

工事の開始日からは新たにプレハブの簡易型待合室が設置されました。さて、地上型の駅舎とはどのようなものか期待したところ・・・

まさかの壁が茶色くなっただけ。先ほどの白いプレハブと比べてサイズが大きくなっているのが分かるため、同一ではありません。え、まさかこれが駅舎・・・となりました。トイレは以前駅前に古~いのがありましたが、撤去されています。代替設置はありません。

すでにトイレの見直しが行われた駅

釧網線 中斜里駅

2020年の時点で、老朽化に伴いトイレが閉鎖されています。列車内のトイレをご利用くださいとのことです。

留萌線 石狩沼田駅

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深川駅独自?の経費削減策で、トイレットペーパーの設備が停止されました。現在は町が設置しています。

 

近年のJR北海道の、駅舎に対する考え方

まず、小さな駅に自費で駅舎は設置しない! 設置してもトイレはなし! 設置したければ地元の負担で! 駅舎はコンパクトに! という雰囲気ですね。近年の改築駅は北吉原、北舟岡、北比布、南比布などがあげれますが、北吉原以外の駅舎は町が駅舎の費用を負担したとみられます。JRがお金を出してローカル線の駅舎を新築した例は近年ほとんどないのでは?という感じです。(追記:本輪西がありました)

 

(余談)その数少ない事例が北吉原と思われるのですが、正直あれではがっかりです。もちろん駅舎を町の顔にという地元の要望がないからああなったのでしょうけど、それにしても今のJRは、街の顔であるはずの駅舎をあれっぽっちのものしか作らないのか、という落胆があります。

一昔前は違っていて、特に釧路支社では駅舎の設備が手厚く、直別・糸魚沢・鱒浦などの駅はそれぞれ立派です。旭川支社ではプレハブが多いものの、東風連、徳満にはトイレがありました。あの頃はよかった。

JRは今後も駅舎を簡易なものへと置き換える計画があるようです。個人的にトイレ廃止くらいはやってもいいですが、プレハブばかりがどんどん増えるのは反対です。「駅は街の顔」だから廃止反対という意見を擁護するわけではありませんが、「駅は街の顔」という鉄道の特性は、どうやらバスには代替できないようなんですね。その鉄道にしかない特性を、自分から潰しにいかないでくれと思います。規模はプレハブ程度でもいいので、新駅舎はどのようなものがよいか、地域の住民とよく考えてほしいですね。

ちなみに、30年前に同じく駅の特性をぶっ潰しにきたであろう貨車駅舎も、30年たてばなぜか愛される存在になっています。プレハブでもどんな駅舎でも、30年後、マニアからは愛されるようになるでしょうか。歴史は繰り返すでしょうか。

余談でした。

 

代替設備は列車内トイレ

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H100形気動車のトイレ。のカギ。フォントが太い。

近年JRが駅のトイレを廃止する理由は、経費削減に加えて、代替となる列車内のトイレの設備が充実してきたことが挙げられるのでは、と思っています。釧網線花咲線の主力、キハ54のトイレは洋式化が完了しています。また、H100のトイレは車いすに対応した大きいものが設置されており、十分代替設備になります。列車内にバリアフリーできれいなトイレがあれば、駅の(古くて汚い)トイレの存在意義はほとんどなくなるのです。

 

無人駅にトイレがある姿は貴重になる

今後進むであろうトイレの見直し、それは「無人駅にトイレがある」というまぁまぁ当たり前の光景が、今後じわじわ減っていくことを意味します。減らされる一方の無人駅の設備、トイレは今まで割と普通に残ってきましたが、ついに計画的に減らされる時が来たかぁと。まぁ、トイレは一般的に写真に撮るものではないんですけど、気づいたときに記録に残していければいいかなぁと思います。

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国鉄感のあるトイレを記録するなら今のうちに。

 

トイレ設置駅が公開されている!?

さて、JR北海道無人駅に、どこの駅にトイレがあって、どこにはないか、どこの駅が閉鎖されているか・・・これを把握している人ってなかなかいないのではないでしょうか。私も見当がつきません。ところがまさかの、JR側がこのデータを公開していた、というのがこの記事のメインです。

令和2年度 第2号様式 移動等円滑化取組報告書(鉄道駅)

https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/other/pdf/r2_houkoku_eki.pdf

今後機会があれば、上の資料を詳しく見ていきます。つづく。

 

*1:札比内駅の情報、写真、印象記(北海道:JR北海道-札沼線)」TRAVEL STATION

*2:旧札比内駅トイレの再開について」広報花の里つきがた 令和3年5月号(646号)