もみじの研究ノート

駅名標の奥深い世界へようこそ。

みなとみらい線 元町・中華街駅に残る開業当初のサイン

ずっと見たかったみなとみらい線の旧サイン

先日東京と横浜に行ってまいりまして、ずっと見ておきたかったみなとみらい線のサインを鑑賞してきました。基本的にツイートとして振り返ることが多いのですが、みなとみらい線についてはブログにまとめておこうと思います。初の北海道以外の話題です。

 

みなとみらい線について

私なりに簡単にまとめておこうと思います。皆がイメージするきらびやかな横浜の街を走る路線。東急東横線相互直通運転し、一体的に運転されています。地下鉄といえば地下鉄ですが、それを感じさせない芸術的な鉄道です。横浜以外の5つの駅はそれぞれの建築家により異なるデザインとなっており、どの駅も魅力ある駅空間となっています。

そして開業当初のサインは営団地下鉄のサインシステムを製作されたことで有名な赤瀬達三さんの事務所が設計したものです。フォントにはTBゴシックとRotisが使用されており、最大の特徴は駅によって駅名標のフォントが異なること。

 

今のみなとみらい線は少し残念

現在はみなとみらい駅馬車道駅日本大通り駅にて新しいサインへの交換が行われています。今回は新高島駅元町・中華街駅に残る開業当初からのサインを主に取り上げます。

はじめに全体的な感想をお伝えしておきますが、せっかく美しい駅デザインとサインが、サインのメンテナンスの悪さによって潰されているという感想を抱かずにはいられませんでした。旧サインを見られたのは幸運だったものの、その扱いにはちょっと残念でしたね。

それでは見ていきます。写真は全て2021年9月に撮影したものです。

 

出入口

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さて、本題です。元町・中華街駅へは徒歩で向かいました。早速開業当初から変わらないサインがお出迎え。この暗い雰囲気がみなとみらい線ですね。落ち着いています。

 

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駅名表示。いいですね。鉄道の標準ピクトグラムを使いながら、ここまで個性が出せるものなのかと感じます。

 

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さて、もう一つだけ出入口を見ようということで。ん・・・?真っ暗。最近流行りの非電照サインですか。それにしては左上のMを除いて暗すぎます。なんか終電を逃したような雰囲気です。中央の灰色をはじめ、なんとなく退色が進んでいるようにも感じますが、正確なことはよくわかりません。いずれにせよ、もう取り替える時期を迎えているんだなということは、この時点で感じました。

 

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出入口横にある掲示。全国的に見てもスッキリしていると思います。時刻表のフォントがちゃんとしているのがいいですね。

 

コンコース

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灰色で殺風景な階段を降り、コンコースへ。みなとみらい線、芸術的な駅だとは思いますがこういう細かいところは狭く殺風景なところも多く感じます)おお、残っている・・・でも光ってはいません。

 

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階段を上がると長い長い通路が続きます。中華街はこの先なのですが、この通路歩くのほんとしんどいんですよね。中華街は好きでしたが、この通路は嫌いでした。

 

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この部分は横浜高速鉄道の管轄ではないようで、フォントも筐体も異なります。言葉で表現できませんが、ちょっと特殊な、いい感じの光り方をしています。

 

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さて、ホームの方向へ向かいましょう。これが見たかったんですよ。でも光ってないですね・・・

 

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一応エレベーターサインも。表示がないと思われる裏側にも板を設置しているのが特徴でしょうか。そういえば裏側をチェックするのを忘れました。

 

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お、こっちはついています・・・が、ケチったような照明のつけ方をしていますね。

 

cantik-manis.net

このサイトに掲載されているサインはしっかりとついています。撮影は2017年以後だと思われ、この数年間で左側が消えています。

 

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お!!ここはほぼしっかりと点灯しています。

 

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私が見たかったのはこれです!

 

インデザインを詳しく見てみる

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みなとみらい線。改札外コンコースではこのように路線名を言い切ります。駅を象徴する看板の一つです。矢印の形が特徴的で、軽やかで爽やかな印象を持ちます。フォントはTBゴシックとRotis Sans Serifですね。真面目でスタイリッシュな印象です。

 

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出口サインです。エスカレーターのピクトグラムが枠なしで表記されています。Exitの下に小さく「マリンタワー口」の表記がありますが、どの程度機能しているのでしょうか。一度通りかかっただけではよくわかりません。

 

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この出口には階段もエレベーターもあり、「マリンタワー口」と呼ぶのにふさわしい規模です。エレベーターには「エレベーター出口」の表記が。ところでこの照明、左側は下、右側は上のみ点灯しているように見えます。半分ずつ照明を切っているのでしょうか。

 

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サインを側面から。赤瀬達三さんの「駅をデザインする」を読むと、みなとみらい線のサインの検討においてはかなり筐体にこだわったことがわかります。結果的にそのこだわったものは「外照式」は高齢者などに見にくいことを理由に、採用されませんでした。写真の筐体もかなりこだわりを感じます。

 

コンコース 続き

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先ほどの4番出口の踊り場。階段とエスカレーターが出会うユニークな構造をしています。サインは4台しっかりと設置されており、野良サインは不要という作りになっています。

が、左上の豆電球が光っているような筐体が残念です・・・

 

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原理としては裏側にある2つの照明が透過され、オレンジ色に見えているのだと思います。写真でわかる通り、このつり下げサインは外照式ではなく、そのような状況も想定していません。結果的に文字の両側が照らされるというよくわからないことになっています。

余談ですが、みなとみらい線エスカレーター放送は、「改札口行、下りエスカレーターです」「出口行、上りエスカレーターです」といった簡潔な文言がループで流れます。現在でもほとんどの場所でこの放送が残っていて感動しました。優秀な「音サイン」だと思いますね。

 

きっぷうりば

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さて、改札口付近に戻ります。みなとみらい線には複数の駅で紙をかぶせたような「きっぷうりば」サインがあります。後に紹介する灰色のサインが光るとこの色になるのかもしれません。いずれにせよ汚れたり変色しているように感じ、景観によくありません。4ヶ国語化されていることがわかります。4ヶ国語化の際に交換したと考えられます。

 

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きっぷうりばサイン。照明が点灯しておらず、しかも灰色であり、なんでこんなに見にくいんだというのが正直な感想です。4ヶ国語化の際に灰色の物に取り替えられたと思われます。

 

www.rei-design.co.jp

が、開業間もない姿?もほとんど同じ姿だったようです。光っているように見えません。

 

www.yamaguchi-s-p.com

しかし、2020年時点で光っている画像もあり、よく分かりません。光り方にムラがありますが。みなとみらい線の照明が点灯していないサインには、ベースが白色と灰色の2種類があり、さらにこれは非電照用のステッカーを貼っているのか?という見栄えの良いサインもあります。この違いは私ははっきりと区別できていません。

 

壁面のサイン

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最後に壁面サインをご紹介。一枚目左側のサインは大変よくまとまっていて素晴らしいです。沿線案内も色彩にこだわりを感じます。傾きを斜め45度に限定しているのもすごいですね。二枚目左側、広告をこの部分だけにまとめているのならば素晴らしいのですが、実際には駅のあちこちにいろいろなポスターが貼られていて、美しさを損ねています。いや、言うほど損ねてはいないんですが、ただの普通の駅と変わらなくなっています。

 

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壁面のサインはカーブを描いていることが大きな特徴です。出口案内はステッカーがたくさん貼られており、そろそろ取り替える時期に来ていることを感じます。

 

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出口案内の壁面サイン。通常ならば全面黄色にするところ、とても優しい配色ですね。

 

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構内案内と点字案内。こじんまりとしています。ボタンを押すと、開業時から変わらないであろう音声が流れます。ところでこの「音声・点字案内」のフォント、ゴシック4550のようにも見えます。

 

さて、ここまで元町・中華街駅の改札外のサインを見てきました。なお新山下側は存在を忘れ、見ることができませんでした。次回は改札内とホームを見ていきたいと思います。やはり最も気になる点は照明のメンテナンスが悪いことで、消灯されている照明が目立ちます。節電のためというなら渋々理解しますが、ただメンテナンスされていないような雰囲気を感じます。せっかく素晴らしいデザインなのに残念、という点が今回のみなとみらい線では多数見られました。次回に続きます。続きはこちら

札幌市営地下鉄のサイン 6 東豊線福住延伸時のサイン

札幌市営地下鉄の吊り下げサインを紹介しています。初めての方・目次はこちら

灰色ブーム?

1990年代に建設・設置されたサインは、なぜかベースが「灰色」となっていることが多いです。理由は視認性の向上なのかこの時代重視されるようになった「バリアフリー」が関連しているのかわかりませんが、全国各地でなんとなくその傾向があるように感じます。そして札幌もその一つというのが大変興味深いことです。

 

JR北海道の初期サイン。現在まとまって残るものはほとんどありません。ネット上の資料も乏しいです。

 

営団地下鉄南北線のサイン。化粧室のピクトグラムが灰色ベースになっています。JR線が従来の長方形と異なり円となっていることも分かります。

 

1990年に開業した長堀鶴見緑地線では、大阪市営地下鉄他路線とは異なる独自のサインが導入されました。灰色ベースとなっています。

 

このように、なぜかこの時代のサインは灰色のものが多いのです。そして、今回取り上げる東豊線福住延伸時のサインも灰色になっているのです。

 

東豊線福住延伸部分の各種灰色サイン

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本題からは離れますが、少し東豊線の灰色サインを見ていきましょう。まずは駅名標。上のナンバリングと比べると灰色であることがよくわかると思います。

 

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月寒中央駅コンコースで撮影した「禁止事項」の看板。「9.指定場所以外で喫煙すること」(でしたっけ?)が消された痕がはっきりとわかります。(「指定場所以外で」だけを消せばいいと思うのですが)

 

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札幌らしいと有名な「スキー等」看板。他区間では黄色ですが、この区間は灰色となっています。

他にも壁面の出口看板の文字が灰色であったり、随所に「灰色」を発見することができます。福住方面へ行った時はぜひ見てみてください。

 

東豊線福住延伸時のサイン

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東豊線 学園前駅(2021年1月)

そして吊り下げサインも、灰色ベースとなっているのです。詳しく見ていきましょう。

 

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2021年1月 月寒中央駅 ミニサイズの「のりば」サイン。サインを追い求める人にとっては定番の、エレベーターの裏側に残っているもの。

さてさて、車両のロゴが変更されました。札幌市民にとっても馴染み深い「新旧車両のロゴ」のうち新しい方ですね。STマークが制定されたのは1993年5月1日とされますが、間違いでなければ福住延伸時から本格採用されたこのロゴ。札幌の地下鉄といえばこれ。ゴムタイヤの特徴もよく再現している、今からでも戻してほしいロゴです。

ちなみに当時新形式車両は7000形しかなかったため、このライトの形は7000形をモデルとしてると思われます。3路線の平均的な形、とかではないんですね。7000形の引退とともにこの形式のモデルは姿を消したことになります。現在このロゴが採用されていないのは仕方がないことなのかもしれません・・・

 

www.nakayamagumi.co.jp

月寒中央駅のきっぷうりばサインが撮影されています。枠のないピクトグラムがついており、この区間以外では基本的に見ることができません。が、ステッカー化や電光掲示板の交換によりほぼ絶滅したと思われます。

 

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2017年11月 月寒中央駅の駅事務室。

東豊線開業時、「駅事務室」「きっぷうりば」などにピクトグラムは表記されませんでしたが、このタイプでは表記されています。東豊線開業時の「トイレ」などと同じく、四角形の枠はないタイプです。この時期のサインが一番営団らしさを感じますね。

 

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2015年12月 元町駅。これは明らかに福住延伸時に交換されたものなのですが、隣の栄町方面と比べて色の差異がない、というか、どちらも若干灰色のような雰囲気です。しかし栄町方面も同時に交換されたとは思えず、真相がよくわからないサインです。

「さっぽろ・大通・豊水すすきの方面」時代の看板を入手された方のブログ記事はこちら。私も苗穂のカラマツトレインで出品されているのを見たことがあります。

 

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2017年11月 月寒中央駅のエレベーター。ピクトグラムが線路側に配置されているのは東豊線開業時からの特徴。ちなみに車椅子マークは扉の上に表記されています。

エレベーターのサインはこのタイプから現在と同じ人が3人乗るデザインになったと思います。おそらく全国的な動きに合わせたと思われますが、今まで車椅子利用者向けであったエレベーターがすべての利用者に解放されたことも意味しているのだろうと思います。

 

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2021年1月 幌平橋駅ホームのエレベーターサイン。東豊線以外の駅でおそらくここだけ、灰色ベースのサインとなっています。エレベーターが1994年に近い時期に設置されたのだと思いますが、何度見ても異色の存在です。

このように、フォントはゴシック4550とHelveticaと変化はありませんが、その中でもいくつか違いがあります。

  • 黒地ではなく灰色になっている
  • 地下鉄のロゴが新しくなった
  • ピクトグラムが増えた

なお、「枠のないピクトグラム」が表記されているサインはこのタイプまで。これを知るとサイン観察がかなり楽しくなるかもしれません。

 

設置時期と設置駅

さて、東豊線豊水すすきの~福住間は1994年に開業しました。駅構内のサインは東豊線開業時とそれほど変わらないタイプのものが導入されました。

東豊線学園前~福住駅間の各駅ほか、南北線幌平橋駅などでも同じ「灰色」のサインが見られます。東豊線北側の方面サインがどこまでこのタイプに当たるのかは、要調査です。

現在福住駅では2度、その他の駅でも1度ステッカーサインに交換されており、このサインが顔を出しているはかなり少なくなっています。さっぽろ駅・大通駅にこのタイプと断言できるサインがないことも特徴で、実はかなり希少なサインかもしれません。

札幌市営地下鉄のサイン 5 東豊線開業時のサイン

こんにちは。今回は久しぶりに札幌市営地下鉄のサインについて。本当はJR北海道のトイレを研究したりしたいんですけど、当分の間はいま書きたいものを書くという方針で進めます。このブログの2大テーマの1つ、札幌市営地下鉄のサイン。これから紹介するゴシック4550のサインが終われば、少しずつ終わりが見えてくるような気がします。書き終えるのは一体いつになるでしょうか・・・

初めての方・目次はこちら

 

地下鉄案内標識設置要領の制定

札幌市営地下鉄のサインの歴史を調べていると、「地下鉄案内標識設置要領」の単語がいくつか出てきます。

詳細は不明ですが、1985年(昭和60年)に制定されたようです。これは1982年東西線延伸の3年後、1988年東豊線開業の3年前にあたります。中身についてほとんど情報は得られませんが、「出口案内には、国道などの主要な通り、官公庁、学校、公共施設、出入口からおおむね100メートル範囲のホテルや銀行、金融機関のような主要なランドマーク的施設などを案内する」などの規定が定められているようです。今でいう「サインマニュアル」ですね。おそらくゴシック4550が使われ始めたのもこの時なのだと思われます。

1985年に制定されたこの設置要領は、改訂を重ねつつ2005年時点では確実に、そして2018年時点でも同じ名前の設置要領が使用されていたようです。古すぎるのでは?とも感じますが、実際に駅を見ても確かにそんな雰囲気が感じられます。

なお現在は役割が「 地下鉄駅案内サインマニュアル」に置き換わっているものと思われます。

 

1988年の東豊線開業

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東豊線大通駅はゴシック4550に囲まれる魅惑の空間(2021年1月)

1988年、第2南北線として建設された東豊線が開業しました。開業時から駅構内とホームにLED表示機を設置するなど未来的な地下鉄だったことでしょう。駅構内のサインには本格的にゴシック4550が登場。札幌市営地下鉄の中で最も採用年数が長いサインは東豊線から始まったと言っても良いでしょう。

 

ゴシック4550とは

東京・営団地下鉄のサインのために設計された書体です。1970年代当時、営団地下鉄では多数のサインが入り乱れており、乗客への分かりやすい案内はできていない状況でした。改善策として駅のサインを「システム化」するという結論にたどり着き、1972年に大手町駅で試験的なサインの設置が行われました。そのときに使用された書体です。このサインは好評であり、のちに営団地下鉄の全駅でこのサインが整備されました。詳しくはこちらのサイトなども参考になります。

赤瀬達三さんの書籍「駅をデザインする」で紹介されていましたが、のちに営団地下鉄は、自社のサインマニュアルを全国各地の地下鉄事業者に無償で提供したそうです。札幌もその一つと考えられ、実際、東豊線の駅では営団サインのような看板が多くみられます。

ちなみに北海道では、札幌市営地下鉄のサイン、郵便局のほか、新得駅こ線橋の「おつかれさまでした」の看板、新さっぽろ脳神経外科病院の看板の「新さ」の部分(間違いの可能性あり)、倶知安町内の飲食店の看板などで見ることができます。他にも街の隅々までを観察すればまれに見つけることができ、札幌市北区内の駐車場で見つけたこともあります。

 

札幌版 ゴシック4550のサイン

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東豊線大通駅は、構造・サイン共に他線に比べて簡潔(2021年1月)

ここでは、東豊線開業のころの初期タイプを紹介します。20年以上続くゴシック4550のサインでは初期タイプにあたるもの。札幌市営地下鉄でも代表的なサインの一つです。 

 

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東豊線 さっぽろ駅(2015年12月)

もう一点特筆すべきは、電光掲示板と方面サインを一体化させたこと。通常日本では電光掲示板とサインは施工会社が異なることから、ホームでも別の場所に設置されることが一般的で、実際に札幌でも南北線では一体化されていません。東豊線では新規開業路線であることを生かし、方面サインや時計との一体化を実現し、より分かりやすい案内となりました。

なお2016年の電光掲示板の更新の際、方面表記は非電照式かつ小さな表記にされてしまい、方面サインとしては存在感が弱くなりました。「栄町行」「福住行」の水色LED表記が常に表示されることで補っているものの、もう少し工夫の余地があったのではないかと思わざるを得ません。デザインやフォントは文句なしなのですが。

ちなみに電光掲示板と方面サインを一体化した鉄道会社は、他に2004年開業のつくばエクスプレスなどが有名ですね。

 

4550初期タイプの特徴

ゴシック4550初期タイプに見られる特徴について。矢印はこれまでと大きく変更され、現在のJIS規格と似た矢印サインが使われていますが、矢印が若干太いことが特徴です。営団サインは当初非常に太い矢印サインを採用していましたが、それほどではありません。

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2021年1月撮影・東豊線大通駅。化粧室など、鉄道利用に直接関係のない施設は小さめに表記されることもあります。また、ピクトグラム外枠がないことも特徴です。これも営団サインと共通の特徴です。また、南北線が「Nanboku Line」東豊線は「Tōhō Line」と表記されますね。

 

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ちょっと懐かしい写真を。2017年8月のさっぽろ駅です。275m先の表記が特徴的ですね。このサインは優秀で、現行サインの表記よりも文字組が美しいんですよね。変わってしまって大変残念です。

もう一つ注目したいのがピクトグラム。2000形をモデルにしていますが、市章の星マークが描かれるようになったのはこのサインからと思われます。それまでは省略され、六角形の枠のみが描かれていました。

 

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2017年9月撮影・新さっぽろ駅8番出口。1990年6月に新設されたとされます。現存するゴシック4550サインの中でも最も見応えのあるサインの一つと感じます。新さっぽろ駅を訪れる機会がありましたら是非。ちなみにこの場所、2階に地下鉄の筐体+駅ビルDuoデザインのサインという珍しいサインもあります。

 

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2017年8月の環状通東駅。きっぷうりばと駅事務室が1枚にまとめられている異色のサインです。注目してほしい特徴はピクトグラムがないこと。この時点でのサインでは、ピクトグラムは化粧室やエレベーターなど最低限にとどまりました。このタイプまでの特徴です。

 

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2021年1月撮影・豊水すすきの駅。この年代のサインで比較的比較がしやすいのはエレベーターサインだと思っています。まずエレベーターが現在に通ずる「箱」が上下するデザインであること、ピクトグラムの矢印が丸みを帯びていること、さらに外側の白い枠が四角形と角ばっていることが特徴です。

なお島式ホームの駅において、これまで東西線などではホーム中央に大きな「エレベーター」のサインが1枚掲出されましたが、このタイプからはホーム端に小さなサインが2枚掲出されるようになりました。これにより、電車を降りたあとどの位置からでもエレベーターの位置を見つけやすくなりました。

なお、東豊線開業当時はエレベーターのピクトグラム車椅子マークが描かれた別のもので、詳しく調べてみると、1994年7月の栄町駅では旧ピクト、1994年12月の豊水すすきの駅では新ピクトの写真が見つかりました。一度ピクトグラムのみ、または板ごと交換されたようです。私はピクトグラムのみ交換したと考えており、その関係で白枠が角ばっているのだろうと思っています。

 

ちなみにこのころの「出入口案内表示板」はこのようなもの東西線新さっぽろ延伸時のものと比べ、英語表記がついたこと、フォントがゴシック4550になったこと、「地下鉄」が営団地下鉄のようなフォントになったことなどが挙げられます。営団のサインシステムが全国に配布されたこの時代、全国各地の「地下鉄」表記をこのフォントにしようという試みがあったのかもしれません。

 

設置時期と設置駅

1985年に制定されたと思われるこのサインは、1988年の東豊線栄町~豊水すすきの間開業時、各駅に標準設置されました。それ以外では、東豊線との乗換駅である南北線さっぽろ駅くらいでしょうか。1990年6月にDUO1開業に伴い新設されたと思われる東西線新さっぽろ駅の8番出口、この時代に多目的トイレが設置された駅、この時期に新設された出入口にも設置されていることがあります。

現在、さっぽろ駅ではコンコースのすべてのサインが交換、その他駅でもそのほとんどが非電照化され、まとまって残る駅は大通駅くらいとなっています。

 

このサインは小幅な変更を経て、最終的に2010年ころまで使い続けられました。いま見ても完成度が高いサインであると感じますし、札幌市営地下鉄でも代表的なサインだと感じます。現在最も多く残る大通駅ではサインの更新が進んでおり、残りのサインもあと数年と思われます。お早めに。

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栄えあれ4550。

 

五輪、日本のメダルラッシュの陰で…歴史ある駅名標が続々交換か、北海道の無人駅

釧路支社で相次ぐ駅名標の交換

東京五輪で日本勢がそろって金メダルを獲得したこの数週間、釧路支社管内では駅名標の交換が進んでいます。この交換ラッシュは3月の宗谷線とともに、私がこのブログを始めてから最大の規模ではないかと思います。五輪の日本のメダルラッシュが続く中ですが、ちょっとここにまとめていきたいと思います。(札幌のマラソン、今日の女子を見逃してしまいました。明日は忘れずに見たいです)

 

(番外編)東根室

東根室駅の旧駅名標は、五輪が開幕する前に、地元の鉄道ファンに気付かれながら息を引き取っていました。2月15日時点?では問題なかったものが、2月19日時点では虎ロープによる応急措置が行われています。

新しい駅名標は1ヶ月程度で交換され、標準デザインのツッコミどころのないサインとなりました。「ひがしねむろ」はかなり細長くなっています。

 

西和田駅

西和田駅。更新ラッシュではトップバッターだったと思います。いろいろツッコミどころがありますが、なぜ古い方の照明が残り続けているのか不思議です。点灯はしないとのこと。

ところで今回の更新で設置された新しい枠、右上と左上の丸みが従来と異なるように感じます。2008年ごろから標準的に設置されたものと比較して、より丸っこくなっているように見えます。

別当賀駅

薄くて仕方のない状態が数年間続いていた駅舎横が更新。離れた方も板が更新されました。今回、かつての初田牛駅のように元々駅名標があった場所から移動されていないことが特徴の一つです。

 

厚床

 7月24日午前中に枠のみ再塗装された姿が投稿されており、大変貴重です。そしてなんと休止中の2番線が更新。思ってもみませんでした。これ、2番線側に駅名表示はあるのでしょうか。誰かドローンでも飛ばしてほしいですね。ダメかな?

 

浜中駅

これは名所案内がついに一線から退き始めてきたことを意味しています。ただただ残念でしかないです。

 

上尾幌駅

今も駅名標は光ってくれるか。それだけ気になります。

 

庶路駅

ロダンEBの駅名標って比較的新しいはずなんですよ。なぜこんなに汚くなったのでしょうね。それなりに貴重な駅名標が消滅です。 

 

白糠駅

貴重なゴナ駅名標がなくなってしまいました。伝統の枠が受け継がれたのは良かったです。

 

音別駅

光れ!!!!!(どんどんコメントが適当になる)

 

厚内駅

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厚内駅駅名標(2016年8月)

たまには私の写真を。私の駅名標の写真は今も昔も傾きを気にしません。真正面から撮る写真も確かに魅力的で最近は撮りますが、もっと自由に撮っていたい気持ちが強いのです。

いや〜ほんと、ここは当分変わらないであろうという駅名標が続々更新されました。今後このエリアで更新が確認できた駅は、随時追記します。

 

本社管内でも更新!?

さて、ここまで釧路支社を見てきましたが、なんと本社でも更新が進められているようです。しかもその手法が釧路と全く一緒なのです。あ、これは同一の作業チームが入ったなと感じます。現在確認できている駅をまとめます。

 

平岸駅

一旦灰色になるという点が釧路と全く同じなんですね。ただしこの駅は灰色の時期が長いようです。 この色になったまま長い期間そのままの峰延などもあり、どういう差なのか気になります。

 

光珠内駅

スパイダーマン
光珠内駅にて pic.twitter.com/4MZetqBnIW

— MJ (@MJ29053670) 2021年7月19日

↑かなりスパイダーマンなので閲覧注意。

いや〜とうとう更新されてしまいました。本社管内で枠がそのままって異例ですねって言おうとしたけど、室蘭本線ではよく見かけますね。 

さて、駅名標更新の波は確実に訪れています。各支社コストカットを進める昨今、枠は今しばらく楽しめそうですが、ゴナの駅名標がまとまって残る線区はいよいよ少なくなっていきそうです。

 

 

極端にご利用の少ないトイレ 廃止検討

※終始トイレの話題しかしません。画像もあります。閲覧には十分ご注意ください

利用の少ない駅トイレ

先日発表された、JR北海道のローカル線を維持・活性化するためのアクションプラン。釧網線花咲線の「経費節減」の項目に、利用の少ない駅トイレの利用停止を検討するという、これまでに見たことのない項目が追加されました。はぁ~ついにここまで削減に来たかと。

 なお、この項目があるのはこの2つの路線のみ、つまり釧路支社のみです。他の支社ではこの点にいまのところ言及がありません。まだやるつもりはないか、もう廃止し終わったかのどちらかです。

 無人駅のトイレ廃止。人によってはそんなのあたりまえの経費削減策と考える方も多いでしょう。また、汚いから使ったことがない、確かに不要ではという方も多いでしょう。はい、私もその一人です。今回は、そんな無人駅のトイレに注目して見ていきます。

 

JR北海道 無人駅トイレの現状

といっても私は特に駅のトイレオタクではなく、無人駅のトイレについて熟知しているかといえばそうではありません。私が写真を持っていたり、思いつく事例をいくつか紹介します。

 

国鉄のにおいがムンムンするトイレ

函館線 駒ヶ岳駅

函館支社に位置する駅です。駅舎は駒ケ岳をイメージしたようなそれなりに新しいものが設置されていますが、トイレは別棟です。以下の写真は2018年3月に撮影したものです。

 

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右側が別棟のトイレ。どちらも外観はきれい。

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トイレ内部。蛇口に「使用できません」の文字が見える。

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個室。果たしてここに立ち入って良いのだろうかという雰囲気。

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小便器。スターライト製トイレもびっくりの古さ。

これは国鉄時代にはよくあった形態のようで、映画「鉄道員」の幌舞駅でもそうでしたし、深名線鷹泊駅の傾き、最終的に2018年に倒壊したトイレ棟、中興部駅のトイレ棟などは有名でしょうか。駒ヶ岳駅にはそれが2018年時点で残っていました。この時代にこんな建物が存在していて、しかも入ってよいのかという、驚くほどの古さを感じさせます。

函館線 光珠内駅

札幌圏から2駅ですが、ここでも2020年時点で、別棟のトイレというものが残っています。「便所」の看板がいいですね。

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雪が積もる光珠内駅のトイレ。

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トイレ内部。年数を考えると清潔なのかもしれない。

宗谷線 下士別駅

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家の玄関のような下士別駅

ローカル線の駅舎や待合所は、地元の自治体や町内会などが建設した駅が非常に多いです。例えば、有名な糠南駅も待合室は地元が設置したものです。そのような駅の中でトイレも併設されている駅として思いつくのが下士別駅です。維持管理は地元が行っていたのでしょうか。頭が下がります。

JR宗谷本線 下士別駅 仮乗降場が前身なのに駅舎もトイレも駐輪場もある駅 2020.7.24 - YouTube

駅のトイレが動画で紹介されているケース、意外とあります。気になる方は調べてみてください。(私は気になりません)

このように、国鉄時代からそのままなのでは、というトイレが複数残っています。これらの駅でも定期的な清掃などが続けられていると思うとすごいことです。今回の見直しは当然ともいえます。

 

自治体がトイレを設置した駅

日高線 東静内駅

1994年の改築。東静内駅といえば駅の半分を占める「公衆便所」です。

なんと車いす対応であり、JR北海道車いす対応トイレが設置されていた駅としては、最も駅の規模が小さい部類に入るのではと思います。ツイートではJRの持ち物として紹介されていますが、駅舎内・便所内双方に新ひだか町の貼り紙が掲出されていることから、この駅も全体を町が建設し、維持管理は廃止まで、そして現在も新ひだか町が行っているものと思われます。(しかしこの駅はあまりいいイメージを持てません)

札沼線 札比内駅

駅の脇にきれいなトイレが設置されています。2003年にはあったようです*1

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これは憶測ですが、札比内駅の駅舎内にトイレの跡などはないことから、昔は別棟だった→別棟のトイレが老朽化に伴い廃止される際、町が代替のトイレを建設したことが考えられます。

このトイレは札沼線廃止と共に「利用者の減少」等を理由に閉鎖されましたが、住民の要望などから利用を再開しました*2トイレがないと困るという住民はいるということです。こんな入札情報もあります。

なお現在、札比内駅札沼線代替バスパーク&ライド用の駐車場として活用されています。

石勝線 夕張駅

3代目夕張駅は、実はローカル線活性化の起爆剤として移設されたものです。駅舎の管理は当初マウントレースイを運営する企業が行っていましたが、経営悪化により2002年に撤退。その際ホテルと共に駅舎は夕張市の所有となりました。しかしご存知の通り夕張市財政破綻。一時トイレの管理費が賄えず、閉鎖される事態となりました。

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廃止直前のゆうばり駅待合所。「夕張 観光案内センター」は「市」の文字が抜けており、運営母体が変わったことを意味している。

その後、管理を地元観光協会に委託するなどの変化があったのち、最終的には民間企業の寄付によりトイレを再開放することになった経緯があります。管理者の財政悪化によって利用者に大きな影響が生じた駅と言えます。

釧網線 知床斜里

大規模な駅の事例を一つ紹介します。この駅は2007年の改装。この際にトイレをJR施設から町施設への切り離しが行われました。

知床斜里複合駅舎の建設工事着手について | JR北海道

http://web.archive.org/web/20070930015125/http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2007/070509-5.pdf

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なおこの形態は利用者にもメリットはあり、一般的に町設置のトイレのほうが、JR設置のトイレより明るくきれいな駅が多く、車いす対応や石鹸などの設備も充実しているイメージがあります。

事例はまだまだあると思うのですが、この辺までにします。編集していてなんとなく思うことは、地域が建設する駅舎や駅のトイレは鉄道設備の「上下分離」の先駆けなのかなと。また、当時からうまくいく自治体、いかない自治体それぞれあったと思いますし、その本気度の差は駅の雰囲気に現れます。地域や自治体が駅舎・トイレの管理をしっかりやっている駅は明るく感じますし、そうでない駅はそうではありません。

 

近年改築された駅

函館線 大中山駅

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大中山駅の構内案内図。フォントはヒラギノ角ゴシック。

大中山駅は2013年に駅舎が新しくなりました。その際、JRは経費削減策としてトイレを設置しない方針でしたが、これに七飯町は反発、町がトイレを設置することになりました。駅舎内には、確かに七飯町の貼り紙が見られます。トイレはウォシュレット付きという、JR設置では考えられない豪華なものです。

宗谷線 比布駅

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2016年に駅舎が新しくなった比布駅。当初JR北海道は新駅舎を、規模を大幅に縮小したものとする方針でした。しかしこれでは「街の顔」である駅の賑わいがますます衰退してしまうと考えた比布町はJRと何度も交渉。最終的に町が駅舎を建設することになり、トイレや交流施設などを備えた魅力的な駅舎に生まれ変わりました。

室蘭線吉原駅

北海道初の橋上駅舎の撤去が開始されたのは2020年1月です。撤去費用・新駅舎設置費用は、報道を見る限りJRが負担したとみられます。跨線橋撤去に伴う通路新設や駐輪場は白老町が負担したようです。

工事の開始日からは新たにプレハブの簡易型待合室が設置されました。さて、地上型の駅舎とはどのようなものか期待したところ・・・

まさかの壁が茶色くなっただけ。先ほどの白いプレハブと比べてサイズが大きくなっているのが分かるため、同一ではありません。え、まさかこれが駅舎・・・となりました。トイレは以前駅前に古~いのがありましたが、撤去されています。代替設置はありません。

すでにトイレの見直しが行われた駅

釧網線 中斜里駅

2020年の時点で、老朽化に伴いトイレが閉鎖されています。列車内のトイレをご利用くださいとのことです。

留萌線 石狩沼田駅

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深川駅独自?の経費削減策で、トイレットペーパーの設備が停止されました。現在は町が設置しています。

 

近年のJR北海道の、駅舎に対する考え方

まず、小さな駅に自費で駅舎は設置しない! 設置してもトイレはなし! 設置したければ地元の負担で! 駅舎はコンパクトに! という雰囲気ですね。近年の改築駅は北吉原、北舟岡、北比布、南比布などがあげれますが、北吉原以外の駅舎は町が駅舎の費用を負担したとみられます。JRがお金を出してローカル線の駅舎を新築した例は近年ほとんどないのでは?という感じです。(追記:本輪西がありました)

 

(余談)その数少ない事例が北吉原と思われるのですが、正直あれではがっかりです。もちろん駅舎を町の顔にという地元の要望がないからああなったのでしょうけど、それにしても今のJRは、街の顔であるはずの駅舎をあれっぽっちのものしか作らないのか、という落胆があります。

一昔前は違っていて、特に釧路支社では駅舎の設備が手厚く、直別・糸魚沢・鱒浦などの駅はそれぞれ立派です。旭川支社ではプレハブが多いものの、東風連、徳満にはトイレがありました。あの頃はよかった。

JRは今後も駅舎を簡易なものへと置き換える計画があるようです。個人的にトイレ廃止くらいはやってもいいですが、プレハブばかりがどんどん増えるのは反対です。「駅は街の顔」だから廃止反対という意見を擁護するわけではありませんが、「駅は街の顔」という鉄道の特性は、どうやらバスには代替できないようなんですね。その鉄道にしかない特性を、自分から潰しにいかないでくれと思います。規模はプレハブ程度でもいいので、新駅舎はどのようなものがよいか、地域の住民とよく考えてほしいですね。

ちなみに、30年前に同じく駅の特性をぶっ潰しにきたであろう貨車駅舎も、30年たてばなぜか愛される存在になっています。プレハブでもどんな駅舎でも、30年後、マニアからは愛されるようになるでしょうか。歴史は繰り返すでしょうか。

余談でした。

 

代替設備は列車内トイレ

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H100形気動車のトイレ。のカギ。フォントが太い。

近年JRが駅のトイレを廃止する理由は、経費削減に加えて、代替となる列車内のトイレの設備が充実してきたことが挙げられるのでは、と思っています。釧網線花咲線の主力、キハ54のトイレは洋式化が完了しています。また、H100のトイレは車いすに対応した大きいものが設置されており、十分代替設備になります。列車内にバリアフリーできれいなトイレがあれば、駅の(古くて汚い)トイレの存在意義はほとんどなくなるのです。

 

無人駅にトイレがある姿は貴重になる

今後進むであろうトイレの見直し、それは「無人駅にトイレがある」というまぁまぁ当たり前の光景が、今後じわじわ減っていくことを意味します。減らされる一方の無人駅の設備、トイレは今まで割と普通に残ってきましたが、ついに計画的に減らされる時が来たかぁと。まぁ、トイレは一般的に写真に撮るものではないんですけど、気づいたときに記録に残していければいいかなぁと思います。

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国鉄感のあるトイレを記録するなら今のうちに。

 

トイレ設置駅が公開されている!?

さて、JR北海道無人駅に、どこの駅にトイレがあって、どこにはないか、どこの駅が閉鎖されているか・・・これを把握している人ってなかなかいないのではないでしょうか。私も見当がつきません。ところがまさかの、JR側がこのデータを公開していた、というのがこの記事のメインです。

令和2年度 第2号様式 移動等円滑化取組報告書(鉄道駅)

https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/other/pdf/r2_houkoku_eki.pdf

今後機会があれば、上の資料を詳しく見ていきます。つづく。

 

*1:札比内駅の情報、写真、印象記(北海道:JR北海道-札沼線)」TRAVEL STATION

*2:旧札比内駅トイレの再開について」広報花の里つきがた 令和3年5月号(646号)

ホーロー駅名標のあれこれを考える

こんにちは。もみじばしです。(一時期)サッポロビール駅名標のことが気になりすぎて、夜も眠れておりません(でした) だいぶ重症です。

でも、趣味ってこの、一体どうなるの!?真相は???を色々と考えて自分なりに追求する時間が一番楽しいと思うんですよ。ということで今回も楽しんで書いていこうと思います。

この記事は2本目です。前回の記事はこちら

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北海道の鉄道旅と共にあったホーロー駅名標

やっぱり広告料を払っているのでは

前回の記事で「サッポロビールは広告料を払っていない!」と結論づけましたが、自信のある結論ではありません。矛盾する点もあるからです。

 

今塗りつぶす必要性がない

6月26日現在、塗りつぶしは徐々に進められ、山線塩谷駅側から始まった塗りつぶしは山線全駅に、そして海線東室蘭あたりにまで及んでいます。

また、6月28日に富良野駅の塗りつぶしが行われ、赤平駅・茂尻駅などでも作業が始まっているようです。追記:ちなみに今回、熱郛駅や落合駅などの境界付近にある駅も同時に作業が行われました。今(追記した7月20日)のところ本社管内から作業が進んでいますが、支社境による厳格な区分けはされていないようです。

塗りつぶされて真っ白になり、ねじ等も交換されたものがほとんどですが、白色のシールを張ったのみの例が長万部駅で確認されています。

さて、もし「広告費用を払っていない」とすると、この塗りつぶしは何のためなのでしょうか。もし来年札幌圏を中心にビール広告のない駅名標が設置される場合、札幌圏と広告の有無をそろえるためという可能性が考えられます。しかし現在、札幌圏を中心にビール広告は継続されるようです。この時、広告費用を払っていないのに塗りつぶされる意味がよく分かりません。ただただ塗りつぶしにお金がかかるだけで、誰も得をしないどころか、わざわざ塗りつぶすJR北海道の損です。

そもそも、この駅名標広告は設置時に掲出期間が決められていたわけではありません。毎年お金を払っていないなら今後も塗りつぶさず掲出を続けてもいいはずなのです。塗りつぶすだけの何かがあったのです。

 

勝手には外せないらしい

こんなツイートを見かけました。やはりビール広告は意識している場合があるらしく、むやみに撤去できない=今ある駅名標はしっかりと広告としても機能しているらしいのです。盗難や廃駅によって徐々に減少しながらも、毎年広告費用を払っているのかもしれません。

 

上富良野駅が本当に更新される!?

今回の本題ともいえる内容です。私は当初上富良野駅の駅名標更新について、「富良野」の間違いなのではと考えていました。また、その時から「上富良野にはサッポロビールの研究施設がある」と気付かれていた方がいましたが、私はその可能性について当初十分に検討しませんでした。

が、まあ一応と思って調べてみると、その研究所は本当に駅の近くにありました。

しかも、サッポロビールの事業紹介として上富良野が大きく紹介されています。国内で唯一ビール大麦とホップの両方が生産されている地域特性を生かし、地域の振興を支援しているとのこと。

ちなみに私はこの事業紹介を読んで、サッポロビールは地域貢献に積極的な企業だなぁと感じました。そう、このサッポロビール駅名標だって大きな地域貢献です。同社の印象が大変よくなりました。ビールだけじゃなくていろんな事やってるんですね。北海道が好きな者として、元北海道民として大切にしたい、応援したくなる企業です。

で、これは富良野の間違いじゃないわ、絶対に関係あるわ・・・と思ってしまったのです。

そして実際に、富良野駅は塗りつぶされました。記事のミスではありませんでした。

 

そういえば…苗穂駅

上富良野駅でわざわざ駅名標を更新する理由。それは、広告部分を上富良野にある研究施設をPRする広告にリニューアルすることが考えられます。考えてみれば、似たような例がすでに一つあります。苗穂駅です。

苗穂駅は2019年の橋上化の際、白石駅とは異なり駅名標の新品交換が行われました。佐野書体ではないもののレトロ調の書体となり、広告部分にはこれまで新幹線以外に例を見ない「サッポロビール博物館」をPRする広告が2種類掲出されました。これまでの在来線では「本場の味 サッポロビール」「北海道は サッポロビール」であったため、この広告は「黒ラベル」「クラシック」と共に異例の広告なのです。サッポロビールがその地域独自の広告を掲出する。今回上富良野駅では似たようなことが行われる可能性があるのではと思います。

(ここは完全に憶測なのですが、来年札幌圏の駅名標はガラッと変わり、これまで見慣れたデザインが大きく変わる可能性もゼロではありません。もしそうなり、かつ苗穂のみ更新が行われない場合、これまでの雰囲気を残す駅名標は苗穂のみとなります。苗穂駅は新しいながらも鉄道のまち、ビールのまちとして駅の歴史を活かしている部分があり、この駅名標もその一つにしたくて、あえて旧デザインの復刻をしたのか?なんて。本来は新函館北斗のような新デザインでも良かったのです。)

 

札幌圏、駅名部分は更新される?されない?

前回、JR北海道は「駅名標のデザインについて、多言語化ユニバーサルデザイン化を含めたデザインの抜本的な見直しを検討しており、今回の更新に至った」と推測しましたが、上富良野駅の更新が濃厚になったことから、これは誤りの可能性が高くなりました。富良野線上富良野だけ駅名部分のデザインを変えてもおかしいだけです。というわけで、今回の更新は下部分のみで、上部分は今後もしばらく何も変わらないのではと推測することもできます。

ただし、上富良野と札幌圏が全く同じように更新されるとも限りません。また、北海道新幹線も新デザインになるという表現がされており、いやこれ、野幌とかも変わるの?などと疑問は尽きません。今後の動きに注目です。

 

小さな駅に縦型駅名標は不要?

車内アナウンスや車内表示器の充実が進んだ昨今、駅名を駅名標で確認する一般利用者がどれだけいるかと言われると、あまりいません。1日何人乗り降りするかわからない小さな駅に高価なホーロー製の駅名標を配置する意味も、あまりありません。30年前と比べて明らかに駅名標の役割は衰退しており、実際緑が丘駅、西留辺蘂駅などの新規開業駅では、縦型駅名標は設置されていません。盗難された駅名標の代替品が設置されたのは、秘境駅として注目を集める問寒別・雄信内のみです。

また、今年3月に廃止された徳満・上幌延・安牛では、廃止を前に盗難防止対策として駅名標が撤去されました。各駅では駅名標部分や駅舎内に「駅名標は撤去した」旨の掲示が貼り付けられ、代替の駅名標に相当する掲示はされませんでした。これは、縦型駅名標はあってもなくてもよい。なくても旅客案内上問題は生じないと考えていると言えます。

そのため、JR北海道では「小さな駅に縦型駅名標はなくてもよい」「今ある駅の縦型駅名標は残すが、今後盗難や老朽化した場合、代替の新しい駅名標は設置しない」という方針があるものと思われます。

ところで近日、宗谷線の多くの駅でホーロー駅名標がなくなる事案が発生しました。このうち、咲来・筬島では音威子府村広報紙により盗難があったと伝えられています。このほかにも複数の駅で、駅名標が木の板だけになったり、根こそぎなくなっていたりしています。

このうち抜海駅では駅舎に「JR」を含めて4枚の駅名標が設置されていましたが、先日少なくとも2枚がなくなっていました。この件について、個人的に大変残念なことであったため、情報提供を兼ねて駅施設を維持管理している稚内市に連絡したところ、「盗難事件があることから、JR北海道が一部を除き撤去した」旨の連絡をいただきました。

抜海駅を管理する南稚内駅では、廃止される徳満駅のホーロー駅名標をかなり早い段階から撤去していました。また現在、勇知駅でも一部のホーロー駅名標が見られなくなっており、南稚内駅の判断で撤去が行われたものと思われます。

個人的には、ああ、もう北海道の駅にホーロー駅名標が当たり前に掲出される時代は終わってしまったのかな、と残念に思っています。なんか情けないですね。なんとかならないのでしょうかね・・・

なお他駅については、過去の事例等を踏まえ、JR側・沿線自治体側がすでに状況を把握しているものと考え、このような連絡・問い合わせは行っていません。

現在もオークションでは複数のホーロー駅名標が販売されていますが、怪しいものは購入しない、窃盗犯の応援につながるようなことはしないというのも大事だと思います。

 

塗りつぶし・残存はファンへの配慮かもしれない

そんな中、今回ビール広告の「塗りつぶし」は大変ありがたいことです。1枚1枚塗りつぶしてねじを交換するより外してしまったほうが作業は簡単と思われる中、今後も残してくれるのですから。個人的には秩父別駅金山駅、緋牛内駅のようにたくさんの看板が設置されている駅で、広告の役割がなくなった時、果たしてすべての看板が生き残るのかどうか、気になるところです。JR北海道のマニュアル的には、あってもなくてもどちらでもよい看板ですので。

しかし、北永山駅などの小さな駅ではホーロー駅名標がなくなっている駅もあります。もしかしたら駅の規模ごとに方針が異なり、仮乗降場風の駅では撤去される駅が増えるかもしれません。廃線が濃厚な留萌本線などはどうなるでしょうか。少し心配でもあります。今後の動きに注目です。

 

さて、ここまで色々見てきましたが、結局広告にお金を払っているのかいないのかは、よく分かりません。誰か取材してくれないかなぁ・・・と、今後のメディアの記事を待つことにします。次回北海道に行ったら、札幌圏を中心に色々お葬式しないとなぁと思っています。地方にも残っていれば良いですが、間に合うでしょうか。

「サッポロビール」駅名標広告 撤去の背景には

サッポロビール」撤去へ・・・

ご存じの通り、サッポロビールは現在JR北海道の駅に設置されている「本場の味 サッポロビール」の駅名標広告の掲出を終了するというニュースが報道されました。北海道の駅を象徴する看板であっただけにとても残念です。

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北海道の鉄道に欠かせない、ホーロー駅名標と「サッポロビール

配信されたニュースを読む

hre-net.com

記事は6月9日の正午、北海道の今を読み解く地域経済ニュースサイト「リアルエコノミー」によって配信されました。北海道の鉄道関連のニュースの第一報がこのメディアから配信されることは珍しく感じます。

 広告掲出から今年で37年、サッポロビール(本社・東京都渋谷区)はJR北海道ソリューションズ(同・札幌市東区)と協議、定期的に実施している広告施策の見直しの一環として駅名標広告の掲出を終了することにした。

駅名標管理しているのはJR北海道ソリューションズです。旧「ジェイ・アール・エージェンシー」で、駅名標の盗難を伝えるニュースでも同社が取材に答えています。

サッポロビールが広告施策の見直しを定期的に実施しており、今回もその一つというわけです。雰囲気的にはサッポロビール側から見直しの提案をしたような雰囲気です。

当時から変わらない駅名標が設置されている駅は、2020年の時点で約410駅。

ほう。410駅ですか。これは「平和」が含まれるのか、「手稲」が含まれるのか「摩周」「知床斜里」が含まれるのか気になるところですが、ところでJR北海道の駅って今いくつでしたっけ? 

会社概要|企業・採用|JR北海道- Hokkaido Railway Company

https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/company/comtop.html

 

現業機関 2020年6月1日現在

駅 390(有人駅101 無人駅289)

・・・え? 390駅?そして2020年6月時点? これは日高線を含んでいるということです。え、公式、データ更新してないの・・・?

とりあえず、この部分は後日検証が必要です。ここの数字がちゃんとしているか、していないかが、記事後半の内容にかかわってきます。

このうち函館や新函館北斗、小樽~岩見沢間、旭川、札幌~苫小牧、札幌~北海道医療大学間、帯広、釧路、上富良野の各駅のほか、北海道新幹線新函館北斗木古内奥津軽いまべつの3駅を合わせた約60の駅には、新デザインの駅名標が掲出される。新デザインの掲出は、22年度からだがデザインは現在、検討中。

新デザイン?? これまた初耳です。設置される駅は札幌圏、函館、新函館北斗旭川、帯広、釧路、上富良野及び北海道新幹線の駅です。これまた設置基準が謎で、「主要駅」にしては室蘭や北見がありません(まあ主要駅ではないのかもしれませんが)「観光客が多い駅」としても登別・洞爺がありません。「新しくて近代的な駅」としても、釧路駅はちょっと変です。さらに謎なのが「上富良野」です。「富良野」の間違いであることも考えられます。設置は来年度とのことです。

それ以外の駅にある駅名標は、6月から順次、広告部分が撤去または塗りつぶされていく予定になっている。

はい。なんか山線で塗りつぶしが始まってしまいました。「6月から順次」ということで予定通り進んでいるということでしょう。

それ以外の駅は」とあり、札幌圏を中心にサッポロビールの広告はあと1年ほど残ることになります。

「撤去」という表現もあり、塗りつぶし以外にも動きがあるのか気になります。上側駅名部分と合わせて撤去ということなのかもしれません。

国鉄時代から続いてきた「サッポロビール」入りの駅名標が終了することに伴い、関係者は駅見回りを強化、駅名標の盗難を防止することで駅を大切にしてきた地域住民の思いに応えていく。

はい。よろしくお願いします。

 

広告料は毎年払っているのか?

今回の駅名標広告の撤去。「いままでサッポロビールは毎年広告料を支払っていたが、ついに終了することになった」という受け止めが広がりました。しかし、果たしてそうでしょうか。私はこの点を中心に、広告撤去の真相に迫っていきます。なお、憶測があります。それを踏まえてお読みください。

駅名標広告の歴史

もともとこの駅名標は、収支が悪化する国鉄の経営改善策として1984年に導入された駅名標です。広告主に駅名標の製作費用を全額負担してもらい、今まで文字だけであった駅名標の下部に広告を掲示するというコンセプトで制作されました。ちなみに北海道の駅名標は後期型のものであり、国鉄書体の中でも高く評価された「佐野書体」が用いられています。この辺りは中西あきこ著「されど鉄道文字」などを読むとわかります。

当時の新聞記事 

以前私は北海道新聞の記事を読んだことがあります。札幌鉄道管理局管内では、1984年の7月末~8月の約1か月間に、3000枚の駅名標が新しくなったようです。サッポロビール駅名標制作費用の全額を負担したほか、国鉄三百数十万円の広告収入が入った。とあります。単純計算で、1枚当たり1000円です。なかなか安めのようにも見えますが、ホーローという高価な素材で相当な数を制作していますし、無人駅の掲示が多かったことを考えると、まあこんなものか、という気もします。

ちなみに函館地区では仮乗降場にも掲示されたり、釧路地区では特定地方交通線には設置されなかったなど、いろいろと話題がありますが、今回は省略します。

さて、ここで「三百数十万円の広告収入が入った」と書かれていますが、今後も継続して入るとは書かれていません。書いてあったらその内容もツイートに書いているはずなので・・・ 後日再確認したいですね。ともかく、広告料収入はこの一回きりではないか、という雰囲気がします。

道南いさりび鉄道への譲渡

サッポロビール」の広告が他社に譲渡された事例があります。その一つが道南いさりび鉄道です。 

北海道道南地域(五稜郭木古内間)並行在来線 経営計画

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/stk/BusinessPlan.pdf

道南いさりび鉄道の鉄道施設は、「列車運行に必要な施設・設備は、現在、江差線五稜郭木古内間)を運行しているJR北海道から譲渡前に必要な整備・修繕や不用となる資産を整理した上で譲り受ける」としています。譲渡額は約16億円であり、同額をJR北海道が支援金という形でいさりび鉄道に支払い、実質無償譲渡という形をとっています。

ここに、サッポロビールの広告については何も記載されていません。議事録にも何もありません。いや、当然といえば当然なのですが、会社が変わるのにサッポロビールとの広告契約を話し合わないというのは不可解な気がします。いずれにしても、ここの議事録に乗るほど大きな話題ではないというのは確かですが。

鉄道記念館への譲渡

国鉄民営化前後に廃止された路線、深名線江差線などで、駅名標の譲渡、および資料館での展示が行われています。(たぶん譲渡だと思います。ちなみにSLなどはJRが町に貸し付ける形を取っています)私がすぐに思いつく例は計呂地、佐呂間、一ノ橋、三笠鉄道記念館、政和、江差などがあります。そこで気になるのが、駅名標サッポロビール広告とともに保存されているかです。基本的にビールの広告は保存されていない駅が多いんですね。例外的にビール広告付きなのが佐呂間芭露一ノ橋音威子府*1滝里(レプリカ)、置戸(昔)、北檜山です。(ほかにもあると思います。思いついたら追加します)

なお、近年の廃駅はサッポロビールを含めて保存される駅が増えてきているような印象を受けます。例えば上のツイートの天幕川湯弟子屈、ほかには智東直別・尺別北豊津沼牛などです。

それでも江差吉堀木古内町郷土資料館)、茶内清水沢?などはビールなしです。

もし廃線後もビール広告を掲出している場合、何らかの手続きが行われるはずです。特に佐呂間・芭露ともに屋外に掲出されており、広告料を払っている可能性もあるのです。しかし、そんな話は聞いたことがありません。

傾向として、国鉄末期から現代に近づくにつれ、ビール広告付きの駅名標が増えてきている。ただし江差線など、最近でもビール広告がない路線もある。と言えます。

オリジナルグッズ

JRがホーロー駅名標を「駅名標ミニチュアレプリカ」として売り始めたのは2017年ころだったと思います。1枚1000円で最初は主要駅からの発売。徐々に廃駅など、発売駅が拡大されました。

www.tabirai.net

それまでもホーロー駅名標のストラップなどはあったものの、フォントのバランスなどが本物と異なっていました。この「駅名標ミニチュアレプリカ」は、駅名部分のフォントが本物と全く同じと言っていい再現度であり、公式ならではの再現度となっています。

最大の特徴は、しっかりと「本場の味 サッポロビール」が入っていることです。これは「サッポロビール 商品化許可承諾済」などの表記が、きっとあることでしょう。

www.e-hkiosk.jp

・・・ない。

JR北海道が最近発売した入場券として、「日高本線記念入場券」があります。基本的に上のミニチュアレプリカと同じデザインであり、2018年以降見ることができなくなっていたホーロー駅名標を入場券にするアイデアはたいへん斬新で素晴らしいアイデアと感じ、私も一冊購入しました。

日高本線記念入場券を発売いたします - JR北海道

https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20210202_KO_hidakakinen.pdf

駅名標(アクリル製)を模した苫小牧駅から様似駅までの全29駅の記念入場券

うーーーん、サッポロビールについて何も言及がありません。商品や「きっぷ」として販売することへの許可、一体どうなっているのでしょう。

 

さて、いろいろとみてきましたが、はっきりと書かれた文献が全く見つかりません。道南いさりび鉄道の収支にサッポロビールからの広告収入がある場合、それなりに大きな収入となって表れるようにも思うのですが、それもよくわかりません。

 

広告として不可解な点

次に、あの「サッポロビール」が広告として不可解である点を見ていきます。なお、私は広告の掲出についての常識をあまり持ち合わせていないため、あくまでイメージとしての「なんか変だな」という点です。

  • 観光客が多い駅に掲出されていない

あの駅名標、北海道第2位の乗客数を誇る新千歳空港駅で掲出されていません。おそらく開業時の従来駅とは全く異なるデザインのなかで、掲出しないことを選んだのだと思いますが、広告の観点から考えると非常にもったいなく、不可解です。

また、釧路湿原駅、(臨)原生花園駅、(臨)ラベンダー畑駅などにもありません。臨時駅は通常駅とは異なりますが、臨時駅だからこその掲出の意味があるはずです。が、どこにもありません。あるのはトマム(アルミ製)くらいです。

  • 盗難されてもそのまま

ご存じのようにホーロー駅名標は盗難が相次いでおり、渡島鶴岡、渡島砂原、増毛、上厚内、問寒別、雄信内などなどもうあらゆるところで盗まれています。これについてニュースで報道されることもあります。が、記事中に登場するのはJR北海道、またはJR北海道ソリューションズのみであり、サッポロビールが登場したことを見たことがありません。また、留萌線駅名標について「いたちごっこになる」という理由で再設置はされませんでしたが、駅名標の再設置についてサッポロビールとの議論が行われたようにも見えません。

※くれぐれも駅名標や駅施設の窃盗行為はやめましょう。

日高線不通区間駅名標は、2018年の夏に盗難防止策として撤去されました。(どこかの新聞記事に、『「駅名標を撤去するとは廃線のようではないか!」とどこかの町長が抗議した。よく聞くと、JR北海道が盗難防止策として撤去したいと申し入れたのだった』という記事があったんですよね。いま見つけることができません)ともかく、それ以降日高線の不通区間にビール広告はなくなってしまったのです。これについても、サッポロビールと協議したという形跡は見受けられません。根室線を含めて、不通区間の広告はどうなっているのでしょうか。特にホームに入れない落合の扱いは気になります。(落合駅のホーム、最近チェックしていないですが、とうとうホーロー撤去されましたっけ?後日確認します)

  • 駅によって差がありすぎる

皆さんご存じだと思いますが、「きたみきたみきたみきたみきたみ」のような駅が、一日数人の駅においても存在します。その一方、ある程度大きい駅でも数枚しか設置がない駅もあります(例:仁木駅)広告媒体としては全く駅の規模による枚数があっていないのです。もし本気でビールを宣伝したい場合、こんな差があるのはどうなのかと思います。

 

私の考え

さて、ここまで見てきました。根拠が少し乏しいながら、私は「サッポロビールJR北海道に、広告料を毎年支払っているわけではない」「設置費用の負担、及び初年度に支払われた額のみなのでは」と考えています。通常の広告とは趣旨が異なる点を差し引いても、明らかにビールを宣伝するという広告効果が薄く、さらに盗難や譲渡などの際にサッポロビールがかかわったという話が聞こえてこないからです。

ではどうなっているか。あの駅名標は全て、サッポロビールからJR北海道国鉄)に「寄贈」のような形をされているのではないか。だからこそグッズや入場券としてある程度自由に販売ができるのではないか。と考えています。

 

札幌圏でデザイン更新?

さて、報道においてもう一つ重大な点が、「札幌圏を中心に、駅名標のデザインが変わる」ということです。確かに近年駅名標を巡る環境は大きく変化し、多言語表記など、全ての人にとって分かりやすい案内がより重視されるようになりました。現在の駅名標は「すみ丸ゴシック」「佐野書体」という非常に読みやすい書体が使用されているものの、多言語表記、駅ナンバリング表記などは行えていません。駅名標の寿命というよりも、時代に合わせた新しいものに取り換えなければならないというJRの考えがあるような雰囲気を感じます。

追記:この説は誤りの可能性も出てきました。詳しくは次回の記事に記載しています。

 

考えられる2つの理由

このサイン更新。そして広告の撤退。2つの理由が考えられます。

  • JRのサイン更新計画を機に、全駅のスポンサーをやめる

今回の撤退はサッポロビールの広告事業の見直しです。JRの計画によってサインを更新するとなれば、また札幌圏の全駅で駅名標の製作費用を負担しなければなりません。 そこでこのタイミングを区切りに、JRが単独で駅名標を製作することになる。

  • JRのサイン更新計画を機に、地方駅のスポンサーをやめる

気になる記事を見つけました。

ebetsunopporo.com

この記事はリアルエコノミーの記事を基にして書かれたと思われ、独自の取材等は行っているようには見えません。しかし、この記事を読むと、「サッポロビールの広告における変更は以下の通り」として、「主要駅や利用の多い駅の駅名標は、新デザインの広告を採用」とあります。この文章、読み方によっては「主要駅や利用の多い駅の駅名標は、新デザインのサッポロビール広告を採用」と取れます。・・・取れません? 

つまり、来年以降の札幌圏・主要駅には「新デザインのサッポロビールの広告」が設置されるということです。サッポロビールが完全に撤退するわけではありません。「6月からの塗りつぶし作業」が札幌圏を中心に除外されるのもこのためである。

代わりに地方の駅では、いつか訪れる駅名標の更新費用を負担しないことを今のうちに決定。地方の駅のスポンサーをやめる。悲しいことではありますが、「広告施策の見直し」としては常識的なことかと思います。

記事の表現のミスも考えられますが、私みたいな個人ブログよりもしっかりした情報ナビだと思います。最初読んだ時あの記事をこう捉えるか〜と驚きました。

 

私としてはこの2通りを考えています。なお、前者は「新デザインの広告を採用」という記事に、後者は「寄贈され、一般的な広告ではないのになぜ塗りつぶす必要があるのか」「やっぱり毎年広告料を払っているのでは」という矛盾点があります。この部分は、ちょっと謎です。

 

駅の風景も新しいものへ・・・

始まってしまいました塗りつぶし。いや〜残念ですね。しかし、とても丁寧な塗りつぶしであり、ネジも交換されています。個人的にはもっと雑な作業を想定していたので、ちゃんと大切にされているなぁということは伝わってきます。残念ではありますが、意外となれるのも早いのではと思っています。今までの駅名標の新しい姿も、全駅記録を目指して頑張っていきたいと思います。

さて、札幌圏を中心に新しいデザインが導入されるようです。新しいデザインがフォントのミスがなく、見やすく、北海道の新たな駅風景として親しまれることを切に願っています。どんなデザインか、果たしてサッポロビールの広告は入るのか。ちょっと楽しみです。

つづく。続きはこちら

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さようなら。本場の味 サッポロビール

 

*1:音威子府は昔ビール広告なしだったものの、後年付け足されたようです。1997年頃の様子がこちら